元夫の“刺激”か、恋人の“退屈な安心”か。親友の一言で気づいた「本当の気持ち」|シングルマザーの揺らぐ心

元夫の“刺激”か、恋人の“退屈な安心”か。親友の一言で気づいた「本当の気持ち」|シングルマザーの揺らぐ心

選びたい"未来"

 空  髪 30代

「……でも、たのしかったのも本当なんだよ」

「分かるよ」

美咲はすぐにうなずいた。

「たのしかったから結婚したんでしょ?」

そう、たのしかった。笑い合って、くだらないことで盛り上がって…あの時間は、ウソじゃない。

「直人さんは?」

私は、息を詰まらせた。

「やさしい。誠実だよ。陽向にもちゃんと向き合ってくれる」

コーヒーの水面に小さな波紋が広がっている。そこに映った自分の顔が、どこか暗くらいのをみて、はっきりと気づいた。

「でも……なんか、たまに息苦しい」

美咲は、少し考えるように視線を上げた。

「それってさ…安心してるってことなんじゃないの?」

「え?」

「ドキドキとか、刺激とか、テンポの良さとかってさ…不安定さや緊張とセットなことが多くない?」

思わず顔を上げる。

「健吾さんといた時、たのしかったかもしれないけどさ、同時に不安もあったでしょ?」

たしかに、いつもどこかで気を張っていた。きげんをうかがっていた。飲み会の帰りを待ちながら、胸がざわざわしていた。

「直人さんは?」

美咲が問いかける。直人といる時間を想像する。どなられないし、不安になることもない。急に連絡が取れなくなることもない。

「……落ち着いてる」

「それが“安心”だよ。物足りないって感じるのは、波がないからかもしれない。でも、その波のなさってめちゃくちゃ大事だと思う」

何も言えない。胸の中で、何かがゆっくりほどけていく。

(刺激と安心…私は、どっちを求めているんだろう)

食事をおえ、店を出るころには、不思議と呼吸がかるくなっていた。

駅までの道を歩きながら、空を見上げる。

(何にゆれていたんだろう。健吾の“変化”に期待していた?それとも、過去のたのしかった自分に未練があった?)

答えは、少しずつ見えてきている。家に帰ったら、直人に連絡してみよう。ちゃんと、今の気持ちを話してみよう。そう思えた時、胸の奥のモヤモヤは、ほとんど消えていた。

私はもう一度、自分に問いかける。

(私が選びたい未来は…一緒に生きていきたいのは、どっち?)

その答えは、もう、ほとんど決まっていた。

あとがき:くらべてしまう心の正体

あたらしいしあわせを前にしたとき、なぜか過去とくらべてしまう──それは未練というより、「自分にとってのしあわせの形」をたしかめる作業なのかもしれません。

安心できる相手なのに、胸が高ならないことに戸惑う。たのしかった記憶がよみがえり、選ばなかった未来を想像してしまう。

けれど、くらべることで見えてくるものもあります。自分はどんな空気の中で笑っていたいのか。どんな日常なら、肩の力を抜いていられるのか。

まよいは遠回りに見えて、実は「納得できる選択」をするための大切な時間。真由が向き合っているのは、だれかではなく“これからの自分”なのかもしれません。

※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています

記事作成: tenkyu_writing

(配信元: ママリ

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