里奈とのやりとりを拓也の妻に見られ、修羅場が発生。それでも、2人は完全に連絡を絶っておらず、奈緒の胸にはいやな予感が広がっていた。
「前と変わらない」の意味
拓也の奥さんとの修羅場の後。里奈と私とのやり取りから、拓也の話題は消えた。
子どもの話、習いごとの話、スーパーの特売の話──いつもどおり。それが逆に不気味に思えた。
(本当におわったのかな……?)
半信半疑だった。でも、こっちから聞くのもこわい。
(もし、まだ続いていたら?もし、私が口を出すことで関係がこわれたら?)
そんな中途半端な立場のまま、数週間が過ぎた。
ある日、公園で偶然、里奈に会った。子ども同士がすぐに走り寄る。里奈は自然な表情で笑っていた。
「このあと時間ある? 近くでご飯でもどう?」
「……うん、いいね。行こう」
ことわれなかった。むしろ、今日は聞かなきゃと思った。
ファストフードのテーブル。子どもたちは早々に食べおえて、遊具で遊び始めていた。そのスキに、私は切り出した。
「……拓也とは、どうなってるの?」
里奈の手が一瞬止まる。でも、すぐに笑った。
「普通だよ。前と変わらない」
「……前と変わらないって?」
「連絡もしてるし、公園もたまに一緒になるし」
私は息をのんだ。
「……距離置くって言ってなかった?」
里奈は少しだけ眉をひそめた。
「でもさ、やましいことしてないし。奥さんも、あれ以来何も言ってこないし…ただ話してるだけだよ?」
里奈は開き直ったように、拓也との近すぎる距離感を正当化した。その口調や表情に、罪悪感や危機感は微塵(みじん)も感じられなかった。
「私たち、"心の支え"なだけだし、ね」
その言葉で私の中の何かが切れた。
ついに爆発した本音
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「それがダメなんだよ!」
言った直後に自分でもおどろくくらい、里奈に怒号をあびせていた。周囲の視線を感じたが、もう抑えきれなかった。
「“心の支え”って何?既婚者同士がそれ言って、何もないわけないじゃん!」
里奈の顔がこわばる。
「奈緒に何が分かるの?」
その一言に胸が痛んだ。分からない。でも──
「子どもたち、あそこで一緒にたのしそうに遊んでるよね?」
私は、遊具で遊ぶ子どもたちを指差した。無邪気に笑い、たのしそうに遊んでいた。
「この前みたいに…バレたらどうなる?今度こそ家庭、こわれるよ?里奈の子も拓也の子も、傷つくかもしれないんだよ?」
里奈はだまって視線を落とす。でも、完全には折れない。
「……大げさだよ」
その言葉が決定打だった。
「大げさじゃない!」
私ははっきり言った。
「もう家族を巻き込んでるの!拓也の奥さんに電話させた時点で…もう当事者でしょ?」
一瞬の静寂。里奈は何も言わなかった。

