うしなったものと、それでも残るもの
それから数か月。里奈は夫と離婚した。修羅場もあったらしい。でも、最終的には話し合いで決着がついたという。
拓也はいま離婚調停中だ。子どもの親権や養育費。簡単ではない現実と向き合っている。2人は、以前のように頻繁(ひんぱん)には会っていないらしい。
「今は、それぞれのことをちゃんとおわらせる時期だから」
里奈はそう言った。あのころの、うわついた声ではない。
最近では、公園で会うこともほとんどなくなってしまった。子ども同士の距離も、自然と変わったのだ。
うしなったものは、きっと小さくない。それでも──
「後悔はしてない」
里奈はそう言った。私は、うなずくだけだった。
正しかったのかどうかは、きっとだれにもわからない。でも、あのままかくれて続けるよりは、ずっと誠実だと思った。
肯定もしない。否定もしない。友人として、できるのはそれだけ。大きな決断をした2人を、私はただ静かに見守る。
人を好きになることは時として、簡単には止められない。でも、どう向き合うかは選べる。
その選択のおもさを、きっと2人はこれから何度もかみしめるのだろう。
私は夜の窓の外を見ながら、静かに思った。だれかの人生を裁くほど、私は強くもなければえらくもない。でもせめて、道だけは見うしなわない人でありたい。
道を逸れそうになった親友たちとの関わりを通じて、私はそう思った。
そして、今はただ、2人の親友の選択が、あかるい将来につながることを祈るばかりだ。
あとがき:答えのない選択、それでも選ぶということ
「不倫」という関係に、明確な正解はありません。傷つく人がいる現実も止められない感情も、どちらも本物です。
この物語では、「かくれ続ける」ことをやめ、「順番を守る」という選択が描かれました。それは決してかるい道ではなく、多くをうしなう決断でもあります。
それでも、自分の選択に責任を持つこと。そして、友人として筋を通そうとすること。
だれかの人生を裁くことはできなくても、自分の立ち位置を選ぶことはできるのかもしれません。それぞれの未来が、少しでも誠実なものであることを願って──。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています。
記事作成: tenkyu_writing
(配信元: ママリ)

