妊娠後期、母は義父への不満を募らせ爆発寸前に。出産祝いを巡る確執や過去の遺恨が再燃し、両家の溝は深まっていきました。彩花は「どうにかうまくいく方法はないか」と悩み続けていました。
陣痛と同時に訪れた対立の火種
不器用でも孫を思う顔を垣間見せる義父の姿を知った一方で、その義父の過去の振る舞いや出産祝いの予定がないことに、はらわたが煮えくり返っている母。溝が深まる中、私たち夫婦やこれから生まれるお腹の子のために「なんとかうまくいく方法はないだろうか……」と私は頭を悩ませていました。
しかし、その間も母の義父への敵対意識が薄れることはなく、母が私たちの家に来た際、隣の家の義父が挨拶にやって来ると、母は最低限の挨拶だけ済ませて素っ気なく帰るほどでした。義父は鈍感なのか、はたまた出産が近づくにつれて丸くなっているのか、母の分かりやすい態度を咎めたり不機嫌になったりすることはありませんでした。
婚約当初の粗暴な態度はまだ見受けられますが、少なくとも「孫の誕生を楽しみにするおじいちゃん」には思えて、私は義父を心底嫌うことはできませんでした。だからこそ、母の義父に対する執拗なまでの嫌悪感や敵対意識が今の私には悩みの種でした。
出産予定日から1週間が過ぎた頃。自宅で夫と母とともに過ごしていると陣痛が始まり、徐々に間隔が短くなっていきました。いよいよ入院し、分娩に向かうことになったのです。
「彩花ちゃん……いよいよだなぁ。しっかり元気な子を産むんだぞ!頼んだよ!」
陣痛で悶える中、義父の興奮状態が悪い方向に作用しているように感じました。その予感は当たっているようで、荷物をまとめてくれていた母は眉をしかめ、義父を睨みつけんばかりの形相でした。
私は無用な衝突を避けようと義父からの声がけを笑顔で受け止めようとしましたが、激しい陣痛にそんな余裕はありません。そんな様子を見て余計に義父にも熱が入り、声がけはヒートアップしていきました。ありがたくもプレッシャーのかかる声がけに、遂には母の堪忍袋の緒が切れました。
娘の怒鳴り声が響いた瞬間
「ちょっと!娘は十分頑張ってるんだから、余計なプレッシャーをかけないでください!」
母の剣幕に場は一瞬にして沈黙しました。しかし、興奮気味だった義父は頭に血が上っていたのか、いつもの粗野な部分をむき出しにして母に言い返しました。
「……こっちは子どもを楽しみにしてるんじゃないか!声をかけて何が悪い!」
「初めての出産は不安なんです!男親は静かに見守るのがいいんじゃないですか?」
母と義父、それぞれの思いがありつつ衝突が起きてしまい、言い合いはさらに激しさを増します。私は痛みに耐えながら2人の言い争いを聞き続けることに限界を迎え、ついに叫び声をあげました。
「もう……二人ともうるさい!」
気づくと、私は母と義父に向かって怒鳴りつけていました。呆気に取られる二人と義母に夫。「ここまで来たら……」と私は溜まった鬱憤を吐き出すように続けて怒鳴りつけました。
「もう孫が産まれるの!大人気ないのは恥ずかしいからやめて!お義父さんはもっと謙虚!お母さんは勝手に暴走しないで!」
思いの丈をぶつけると、シュンとする母と義父。そこに夫がさらに言葉を付け足します。
「俺も夫として情けなかったけど、彩花の言う通りだと思う。親父、今のままじゃ孫に嫌われちゃうよ」
夫がかけた言葉に分かりやすく表情を崩す義父。「これはいいキッカケになる」と思った私は、バツが悪そうな二人に向けて課題を出しました。
「頭を冷やして、2人で仲直りしてください。そうじゃないと、孫が生まれても会わせません」
その後、私は助産師さんに連れられて分娩室へ。赤ちゃんが生まれるまで、分娩室にいられるのは夫のみです。赤ちゃん誕生までの間に義父と実母が少しでも和解してくれればと願いながら、今はとにかく出産に向き合うことにしました。

