「賃貸住宅の更新で、夫が同居人欄に私の名前を記載しないと言っています。出て行かなければならないのでしょうか?」。そんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。
相談者は「不倫中の夫が、自分を追い出すために嫌がらせをしているのではないか」と疑っています。
同居人欄に妻として名前を書いてもらえなかった場合、相談者は家を出て行かなければならないのでしょうか。また、このようなケースに対し、相談者はどのように対応すべきでしょうか。簡単に解説します。
●更新日が来ても出て行く必要はない
まず、同居人欄に名前が記載されなくても、相談者が出て行く必要はありません。
同居人欄は、大家さんが物件の利用者を把握するための記載欄です。主に無断転貸の防止や、防火・防犯管理のために設けられています。
民法では「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない」と定められています(612条)。同居人欄は、この規定の実態を把握するための仕組みとしても機能しているといえるでしょう。
そうすると、相談者が同居人欄に記載されていないことは「無断転貸」にあたりそうにも思えます。
しかし、夫婦が同居している場合、妻の居住は原則として無断転貸にはなりません。
判例や実務上は、家の所有者とともに居住する家族については、基本的には「占有補助者」つまり、独立した権限で住んでいるわけではなく、権利者(今回なら夫)の持つ賃借権を補助する形で一緒に住んでいる立場と考えられています(大審院昭和10年(1935年)6月10日判決、最高裁昭和28年(1953年)4月24日判決など)。
無断転貸とは「第三者に」勝手に貸すことをいいますが、占有補助者ということは第三者というわけではないことになるため、妻が居住することは無断転貸にはあたらないといえます。
つまり、夫(賃借人)が大家との間で賃貸借契約を更新すれば夫の賃借権は継続しますし、妻の居住は夫の賃借権に基づいて保護されます。
●ただし将来のリスクには注意
今回は夫の不倫が疑われている状況です。
たとえば、夫が密かに大家と合意して賃貸借契約を解約してしまった場合にはリスクが残ります。
賃貸借契約は夫と大家の間の契約です。夫が合意解約すれば、相談者は賃借権の基礎を失います。同居人欄に相談者の名前がなければ、大家は相談者の存在を知らないまま手続きを進めてしまうかもしれません。

