動悸や手の震え、汗が止まらない……。こうした症状の背景に、甲状腺ホルモンの過剰分泌による「バセドウ病」が隠れていることがあります。果たして、どのような病気で、どんな治療法があるのでしょうか? 日本甲状腺学会認定甲状腺専門医の榎本圭佑先生に、バセドウ病の基礎知識から治療の流れ、そして目の症状について聞きました。
※2025年11月取材。

監修医師:
榎本 圭佑(天王寺甲状腺えのもとクリニック)
山口大学医学部卒業後、大阪大学大学院で博士(医学)を取得。野口病院や大阪急性期・総合医療センターなどで耳鼻咽喉科・頭頸部外科医として研鑽を積み、甲状腺外科領域を中心に豊富な臨床経験を有する。アメリカ国立衛生研究所(NIH)への留学、和歌山県立医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 講師を経て2023年に天王寺甲状腺えのもとクリニックを開院。日本甲状腺学会認定甲状腺専門医、日本内分泌外科学会認定内分泌外科専門医、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定耳鼻咽喉科専門医、日本気管食道科学会認定気管食道科専門医、日本核医学学会認定核医学専門医、日本がん治療学会癌治療認定医。
バセドウ病って? 医師が解説!
編集部
バセドウ病とは、どんな病気なのでしょうか?
榎本先生
甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで、全身の代謝が異常に活発になる病気です。免疫の異常により、体内で「TSH受容体抗体(TRAb)」という抗体が作られ、甲状腺を刺激し続けてしまうのが原因です。女性に多く、特に20〜40歳代で多く見られます。
編集部
どんな症状が出ることが多いのでしょうか?
榎本先生
動悸、手の震え、発汗、暑がり、体重減少、目の突出などが代表的です。代謝が過剰になることでエネルギーを消耗し、食べても体重が減る人もいます。イライラ、不眠、集中力の低下など精神的な変化を感じる人もいます。
編集部
なぜ女性に多いのですか?
榎本先生
自己免疫疾患は、女性に多い傾向があります。女性ホルモンの影響や免疫反応の違いが関与していると考えられていますが、バセドウ病が“なぜ女性に多いのか”は、詳しくはわかっていません。遺伝的な体質に加え、ストレスや出産、感染、喫煙習慣などをきっかけに発症することもあります。
診断のための検査
編集部
バセドウ病はどのように診断されますか?
榎本先生
血液検査で甲状腺ホルモン(FT3、FT4)とTSHを測定し、さらにTSH受容体抗体(TRAb)の有無を確認します。超音波検査で甲状腺の腫大や血流の増加を確認し、アイソトープ検査(シンチグラフィ)でヨウ素摂取率が高いことが確認されると診断が確定します。
編集部
バセドウ病では甲状腺自体が腫れるのですか?
榎本先生
はい。TRAbの刺激により甲状腺が全体的に大きくなり、柔らかく腫れることが多いです。痛みはありませんが、首が太く見える、のどに違和感があるなどの変化に気づく人もいます。
編集部
甲状腺ホルモンの値だけではわからないのですね。
榎本先生
そうですね。甲状腺ホルモンが高くなる病気には、バセドウ病以外にも「無痛性甲状腺炎」や「亜急性甲状腺炎」「中毒性結節」なども知られています。血液中の抗体(TRAbなど)や尿中ヨウ素、核医学・放射線(シンチグラフィ)の検査で鑑別できますが、経過を追って確定する場合もあります。

