赤ちゃんの頭の変形について、「自然に治るのか」「いつまで様子を見てよいのか」と不安に感じる保護者は少なくありません。頭のゆがみには病気が関係するものと、生活上の外力によって起こるものがあり、見極めと対応のタイミングが重要になります。そこで、赤ちゃんの頭の成長過程、頭蓋変形の原因、治療の考え方について、日本脳神経外科学会専門医の原先生(原脳神経外科クリニック)に聞きました。
※2026年1月取材。

監修医師:
原 晃一(原脳神経外科クリニック)
慶應義塾大学医学部卒業。その後、慶應義塾大学医学部外科学教室入局、済生会宇都宮病院、川崎市立川崎病院、大田原赤十字病院(現・那須赤十字病院)、済生会横浜市東部病院、日野市立病院などで脳神経外科医として経験を積む。2017年、東京都日野市に「原脳神経外科クリニック」を開院。日本脳神経外科学会専門医、日本脳卒中学会専門医。
赤ちゃんの頭の成長と頭蓋骨の仕組み
編集部
赤ちゃんの脳の成長速度について教えてください。
原先生
赤ちゃんの脳は非常に速いスピードで成長し、生後半年までに出生時の約2倍、2歳頃までに大人の約90%の大きさになるといわれています。その脳の急速な成長に対応するため、赤ちゃんの頭蓋骨は7つの骨に分かれているのです。
編集部
頭蓋骨をつなぐ縫合線には、どのような役割があるのですか?
原先生
縫合線には、大きく二つの重要な役目があります。一つは出産時に産道を通るために頭の形を一時的に小さくする役割、もう一つは出生後の脳の成長に合わせてスムーズに頭蓋骨を広げる役割です。縫合線が通常より早く閉じてしまうと頭蓋骨が十分に広がらず、頭の形にゆがみが生じることがあります。
編集部
縫合線が通常よりも早く閉じてしまうことが、全てのゆがみの原因なのでしょうか?
原先生
必ずしもそうではありません。赤ちゃんの頭のゆがみは大きく、「病気が原因の場合」と、「病気ではなく外からの力によって起こる場合」に分けられます。病気が原因となる代表例は、先ほど挙げた縫合線が通常より早く閉じてしまう「頭蓋骨縫合早期癒合症(ずがいこつほうごうそうきゆごうしょう)」です。頭蓋骨縫合早期癒合症の患者数はそれほど多くありません。ゆがみの原因の多数を占めるのは、外からの力によって起こる「位置的頭蓋変形症(いちてきとうがいへんけいしょう)」ですね。
編集部
頭蓋骨縫合早期癒合症になる赤ちゃんは、具体的にどれくらいいるでしょうか?
原先生
出生児の約0.04〜0.1%に起こるといわれています。脳の成長に頭蓋骨が追いつかなくなるため、自然に治ることはなく、治療には外科的手術が必要になります。
頭のゆがみの原因と注意点を教えて!
編集部
外力による頭のゆがみは、どのようにして起こるのでしょうか?
原先生
多くは、寝ている際の姿勢が原因で起こります。頭を常に同じ方向に向けて寝ていると、寝具など接地している部分が圧迫されて成長を妨げ、接地していない側が相対的に大きく成長します。その結果、斜頭や短頭といった頭蓋変形が起こることがあります。特に、斜頸(しゃけい)がある場合は、頭の向きを変えにくいため、よりゆがみやすくなります。
編集部
病的な原因がない位置的頭蓋変形症の場合、自然に治るのでしょうか?
原先生
月齢が低いうちは、その後の頭蓋の成長に伴ってゆがみがある程度自然に軽快し、将来的に目立たなくなる可能性もあります。ただし、その頻度は高くないといわれています。特に、耳介偏位(左右の耳の位置にずれが生じている状態)を伴う中等度以上の変形については、自然な改善が得られにくいとする報告もあります。
編集部
頭のゆがみが、脳の成長や発達に影響することはありますか?
原先生
位置的頭蓋変形症の場合、基本的に脳の成長や精神発達が発達に影響を与えることはないといわれています。ただし、将来的な整容面への影響や、顔面や耳の左右差が生じることで、かみ合わせが悪い、眼鏡が傾くといった機能面の問題が出る可能性はあります。変形の程度と月齢を踏まえた上で、治療について検討することが重要です。
編集部
位置的頭蓋変形症の治療には、どのような選択肢がありますか?
原先生
治療は大きく分けて理学療法とヘルメット治療の2種類があります。ゆがみの程度や赤ちゃんの月齢によって、適した方法を選択します。重度のゆがみがある場合、自然経過による改善が難しいとする報告もあります。

