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神田沙也加さんとの交際語る、元恋人の動画が炎上→非公開に 内容は「死者への冒とく」だったのか?

神田沙也加さんとの交際語る、元恋人の動画が炎上→非公開に 内容は「死者への冒とく」だったのか?

2021年12月に亡くなった歌手・神田沙也加さんの元交際相手の男性が、神田さんとの交際の経緯や当時の心境を語った動画に批判が集まり、3月10日までに非公開となりました。

動画では、元交際相手の男性が時折笑顔を交えながら、神田さんの死について「しょうがないじゃん」と述べたほか、対談相手の先輩ホストとみられる人物も「呪われないかな?」「俺は人を〇すと思わないから」などと発言。

これらの会話が時折笑いを交えながら行われていたこともあり、「ひどい動画」「神田さんへの冒涜」などSNSを中心に強い批判が広がっていました。

なお、元交際相手の男性は、3月10日にホスト名義のインスタグラムを更新し、動画の件について在籍しているメンズラウンジを一時退店することとなったことと、「申し訳ございませんでした」と発表しています。

動画での発言には、法的責任が生じるのでしょうか。刑事・民事の両面から検討します。

●刑事上の責任(名誉毀損罪・侮辱罪)の成立を認めることは難しい

前提として、この動画の中では、直接神田さんの名前は出てきません。しかし、文脈から神田さんをさすことが明らかといえる場合には、直接名前を出さなかったり、伏せ字などを使っていても、神田さんやご遺族との関係で法的問題となり得ることに注意が必要です。

刑事上の名誉毀損罪(刑法230条1項、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)は、公然と事実を摘示して人の名誉を毀損した場合に成立します。

ただし、死者については同条2項に特則があります。「死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない」とされており、死者に適用される場合はとても限られています。

つまり、刑事上の名誉毀損罪が成立するには「虚偽の事実の摘示」に当たることが必要です。この発言は「〜と思うから」という形で主観的な意見・評価として語られており、特定の事実を摘示したとも評価しにくく、「虚偽」であることの立証も困難です。したがって、刑事上の名誉毀損罪の成立は難しいと考えられます。

侮辱罪(刑法231条、1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金など)はどうでしょうか。

「呪われないかな?」などの発言は、死者に対して不謹慎な発言をしていることを自覚しての発言と思われ、故人に対して侮辱的であるとも映ります。

しかし、学説上、死者には侮辱罪が適用されないとされています。なぜなら、刑法230条2項が死者への名誉毀損罪の適用をわざわざ「虚偽の事実の摘示」に限定したにもかかわらず、事実の摘示すら不要な侮辱罪が死者に成立するとなると、230条2項の意味が失われかねないからです。

まとめると、刑事上の責任を問うことは難しい状況です。

●民事では、遺族への不法行為が問われる可能性がある

刑事上の責任が難しくても、民事上の問題は別に考える必要があります。

まず構造を整理します。亡くなった方は権利能力を失うため、神田さん自身の名誉権やプライバシー権を根拠に遺族が代わりに賠償請求する、という構成は難しいといえます。

しかし、裁判例上、「故人に対する遺族の敬愛追慕の情」は人格的利益として保護されており、これを違法に侵害すれば遺族に対する不法行為(民法709条・710条)が成立しうるとされています。

「敬愛追慕の情」とは、故人を大切に思い、その記憶を守りたいという遺族固有の感情的・人格的利益のことです。多くの裁判例がこの考え方を採用しています(東京高裁昭和54年(1979年)3月14日など)。

また、他者に不快感を与えた場合、常に精神的損害についての不法行為が成立するわけではなく、「受忍限度」つまり我慢すべき限度を超える場合に限って損害賠償が認められるとされています。

受忍限度を超えるかどうかは、死亡からの経過時間、発言の内容・態様、拡散の程度などを総合的に考慮して判断されます。今回の動画において、受忍限度を超えたと評価されやすい事情として、以下のような点が挙げられます。

まず、先輩ホストとみられる人物が「2カ月しか付き合ってない子が急にポーンみたいな」と述べた発言です。神田さんの死を「ポーン」という軽い擬音語で表現したものであり、故人の死を著しく軽く扱っているとも読め、遺族の心情を傷つける表現といえます。

次に、先輩ホストとみられる人物が「感情に身を任せて行動しすぎちゃって、人に迷惑かけてる」と述べた発言です。神田さんを「感情的で他人に迷惑をかける人物」と公然と、かつ一方的に評価する内容であり、遺族の心情を傷つけるものといえます。

また「呪われないかな?」という発言も問題だと思います。故人の霊に呪われる可能性を笑いながら口にするもので、故人の尊厳を著しく軽視していると受け取られかねません。

さらに、「俺は人を〇すと思わないから」という先輩ホストとみられる人物の発言も問題だと思います。

この発言は元交際相手を擁護する意図からのものでしょう。しかし、神田さんの死を「人を〇す」という言葉と結びつけ、笑いを交えながら語った点は、遺族にとって精神的な打撃となりうると考えられます。

これらに加え、元交際相手も、交際の経緯などの私的な情報を詳しく語っており、「しょうがないじゃん」と述べている点も、発言の態様が受忍限度を超える方向で評価される事情といえます。

また、これらの発言のすべてが、時折笑いを交えながら行われていたという、発言全体の態様も、受忍限度を超えると考慮される事情といえるでしょう。

そのほか、神田さんの死去から5年以内という比較的短い期間であること、YouTubeという拡散力の高い媒体であることも、受忍限度を超えているという方向に働く事情といえます。

一方、違法性を否定する方向の事情もあります。発言全体が、元交際相手の自己弁護を中心とした会話という形をとっており、神田さんを直接批判することを主目的とした動画ではないこと、神田さんの社会的評価を直接貶める断定的な事実の摘示をしたわけではないと考えられること、などです。

また、その後すぐに動画が削除され、元交際相手の男性が「申し訳ありませんでした」とコメントを出していることは、侵害行為が続けられているわけではないということや、行為の悪質性がそこまで高くないと判断される根拠として、一定程度考慮されると思われます。 (もっとも、動画が既に転載・拡散されているという事実は依然として残ってしまいます)

なお、故人を揶揄(やゆ)するともとれる内容について、受忍限度を超えているとは認めず、不法行為責任を否定した裁判例も存在します(東京地裁平成25年(2013年)6月21日裁判例。ただし記者と出版社に対する訴訟)。

以上をまとめると、民事上の遺族への損害賠償請求という形であれば、受忍限度を超えたとして損害賠償が認められる可能性は否定できないと考えます。

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