老老介護は、高齢の介護者が高齢の家族を支える状態を指し、当事者が踏ん張っているほど外からは見えにくくなります。転倒や急病がきっかけで、介護する側とされる側が同時に生活を維持できなくなることもあり、早めに現状とリスクを整理しておくことが重要です。
一方で、老老介護は特別な家庭だけの話ではありません。高齢化や世帯構造の変化により、高齢の方のみで暮らす世帯や、同居介護の担い手が高齢であるケースが増えています。この記事では、老老介護の定義と現状をデータの見方と合わせて確認し、増加の背景、起こりやすい問題とリスク、そして事前に備えるための対策を解説します。

監修作業療法士:
稲木 康平(作業療法士)
経歴:回復期病棟で約9年ほど、患者様やご家族様のニーズに合わせたリハビリテーションを実施する。また、数多くの患者様に対して、退院後に快適な生活を過ごされるための自宅の環境調整や、介護サービスの提案、家族指導も行ってきた。
資格:作業療法士免許、医療経営士3級
老老介護の定義

この章では、老老介護がどのような状態を指すのかを整理します。あわせて、どのような世帯で起こりやすいかを具体的に押さえ、次章以降の現状や対策につながる前提をそろえます。
老老介護とは
老老介護は、一般に高齢の方が高齢の方を介護している状態を指します。法律上の厳密な定義が全国で統一されているわけではありませんが、実務や調査では、要介護者と主な介護者の双方が65歳以上、あるいは75歳以上といった年齢の組合せで語られることが多いです。
老老介護が課題になりやすいのは、在宅で家族が中心に介護を担う場面です。介護者自身も加齢に伴う持病やフレイルを抱えやすく、介護の負担が長期化すると体力、判断力、家計の余力が同時に減っていきます。結果として、事故や体調悪化の連鎖が起こりやすくなります。
老老介護に該当する世帯とは
老老介護は、家族関係だけで決まるものではなく、同居か別居か、介護度、利用しているサービス量などで負担感が大きく変わります。該当しやすい世帯像としては、次のようなパターンが挙げられます。
高齢夫婦のみ世帯で、どちらかが要介護状態になり配偶者が主介護者になる
高齢の親と高齢の子が同居しており、子が主介護者になる
同居ではなくても、近居の高齢配偶者や高齢のきょうだいが毎日通って介護している
実務上は、介護保険サービス外の負担まで含めて状態をとらえることがポイントです。例えば、通院付き添い、買い物代行、金銭管理、夜間の見守り、排泄介助の補助などが積み重なると、要介護度の数字以上に生活の継続が難しくなることがあります。
老老介護の現状

この章では、老老介護そのものを一つの数で表すことが難しい点を踏まえつつ、関連する公的データから規模感と傾向を読み解きます。世帯構造と、同居介護における介護者の年齢構成に注目すると全体像がつかみやすくなります。
老老介護状態の世帯数
老老介護そのものの世帯数を公的統計で一律に示すのは難しい一方、老老介護が起こりやすい母集団として、高齢者世帯や高齢同士の同居介護の規模を把握しておくと現状が見えます。
2022(令和4)年の国民生活基礎調査では、全国の世帯総数は5,431万世帯で、65歳以上の者のいる世帯は2,747万4千世帯(全世帯の50.6%)です。65歳以上の者のいる世帯の内訳は、夫婦のみの世帯が882万1千世帯(32.1%)、単独世帯が873万世帯(31.8%)で、この2類型だけで約3分の2を占めます。親と未婚の子のみの世帯も551万4千世帯(20.1%)あり、同居家族がいても介護の担い手が限られやすい構造が読み取れます。
また、同居介護の実態を見る指標として、要介護者等と主な介護者の関係があります。2022(令和4)年は、主な介護者が同居である割合が45.9%で、同居の主な介護者の続柄は配偶者が22.9%で最も多く、次いで子が16.2%です。配偶者介護が一定の規模で存在することは、老老介護が起こりやすい土台があることを示します。
参照:『2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況』(厚生労働省)
老老介護世帯数の推移
老老介護の増加傾向は、同居介護における高齢同士の組合せが長期的に増えていることから具体的にとらえられます。国民生活基礎調査では、要介護者等と同居の主な介護者の年齢組合せについて、60歳以上同士が77.1%、65歳以上同士が63.5%、75歳以上同士が35.7%と報告されています。
さらに年次推移を見ると、65歳以上同士は2001(平成13)年の40.6%から2022(令和4)年の63.5%へ、75歳以上同士は2001年の18.7%から2022年の35.7%へ上昇しています。つまり同居介護の中で、高齢の方同士が担う比率が明確に拡大しており、介護者の転倒・急変・フレイル進行といったリスクが介護継続そのものに直結しやすい構造が強まっています。
この流れは、世帯構造の変化とも整合します。2022年時点で単独世帯が全世帯の32.9%を占め、65歳以上の者のいる世帯でも単独世帯が31.8%を占めています。介護を担える同居者がいない、あるいは配偶者のみが担い手になる世帯が増えるほど、老老介護の固定化や支援導入の遅れが起こりやすくなります。
参照:『2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況』(厚生労働省)
将来の老老介護世帯の推計
将来の老老介護世帯を直接推計した統一的な公表値は限られますが、世帯の単独化と高齢世帯の増加は、老老介護が起こりやすい条件を強める方向に働きます。
国立社会保障・人口問題研究所の全国推計(2024年推計)では、世帯総数は2030年に5,773万世帯でピークを迎えた後、2050年には5,261万世帯へ減少する見通しです。一方で単独世帯は増え続け、2050年には2,330万世帯、全体の44.3%に達するとされています。
高齢世帯に注目すると、世帯主が65歳以上の世帯は2020年の2,097万世帯から2045年に2,431万世帯でピークとなり、2050年でも2,404万世帯と高水準が続く見込みです。世帯主が65歳以上の単独世帯は2020年の738万世帯から2050年の1,084万世帯へ1.47倍に増える一方、世帯主が65歳以上の夫婦のみ世帯は675万世帯から636万世帯へ減少するとされています。
この見通しからは、配偶者介護が続いた後に独居へ移行するケースや、同居家族がいないまま在宅生活を続ける高齢の方が増えるケースが増加しやすいことが示唆されます。老老介護の局面では、家族の頑張りに依存し続けるほど破綻時の影響が大きくなるため、要介護認定の早期申請や地域包括支援センター・介護支援専門員(ケアマネジャー)への早めの相談で、支援を前倒しに組み立てる視点が重要になります。
参照:『日本の世帯数の将来推計(全国推計)(令和6(2024)年推計)』(国立社会保障・人口問題研究所)

