■背景にある「心的資本経営」
制度の背景にあるのが、トリドールが掲げる「心的資本経営」だ。
これは、従業員の幸福が顧客の感動につながり、店舗が繁盛し、その利益を従業員に再投資する――この好循環によって企業成長を実現するという考え方で、同社では「ハピカン繁盛サイクル」と呼んでいる。
この取り組みにより、離職率は前年より12.9%低下し、利用客からの「お褒め件数」は24.5%増加。業績面でも、全セグメントで過去最高の売上収益を更新した。
粟田貴也社長は「感動をつくるのは従業員であり、企業が利益を追求するほど、働く人の幸せが最も重要になる」と説明する。
トリドールHDの粟田貴也社長
■「人が人を育てる」文化を制度化
KONA’Sの阿部社長は制度設計の背景について、「現場では日常的に“誰かのおかげで成長できた”という声が上がっている。誰かの成長の裏には必ず支えている人がいる。その関係性を可視化したかった」と話す。
同制度は単なる感謝制度ではなく、「成長」を起点に組織づくりを進める仕組みとして「グロースビルディング」と位置づけられている。
評価は相対評価ではなく絶対評価を採用し、1年間でどれだけ成長したかという「成長幅」を重視する。アルバイトであれば業務習得の進度、社員であればマネジメントや新たな業務領域への挑戦などが評価の軸となる。
また、社員だけでなくアルバイトを含む全従業員を対象としている点も特徴で、組織全体で成長の連鎖を生み出す狙いがある。
「コナズ珈琲 板橋店」内観
さらにトリドールでは、従業員の幸福度を「ハピネススコア」として可視化し、AIとの対話などを通じて測定している。これらのデータは顧客満足や売上とともに管理され、従業員の幸福度向上が来客数や売上の増加につながる関係性を分析している。
人手不足やコスト上昇が続く外食業界では、省人化や効率化の動きが加速しているが、トリドールは「あえて非効率」を掲げ、人が生み出す体験価値を重視する戦略を取る。
MAHALO制度は、こうした文化をさらに強化する取り組みといえる。
阿部社長は「自分の成長を実感できると同時に、誰かの成長にも貢献している状態をつくりたい」と話す。
MAHALOポイントは将来的に昇給や昇格などの人事評価にも反映する方針で、トリドールグループ全体への展開も視野に入れる。

