別居したことで加速
節子さんはひょいと顔を出し、キョトンとした表情で小首を傾げるだけです。
「失礼ねえ…病気だなんて。全部、必要なものなのよ!いつか使うし、だれかにあげるかもしれない。春子さんがいた時は、私の大事なものを勝手に捨てられちゃうんじゃないかって…毎日、生きた心地がしなかったけど……。ふふ。今は、自由でしあわせよ!ねえ、新くん、おばあちゃんの宝物がいっぱいでたのしいでしょ?」
節子さんは満面の笑みで、1歳半になった新に、ホコリをかぶった古いぬいぐるみを手わたそうとしました。私は反射的に新を抱き寄せました。
家の中には、長年蓄積された古い紙の匂いと、カビの臭い…そして、換気が行われていない、特有の淀んだ空気が充満しています。
古くなったエアコンをつけようとすると、「ガガガ……」と異音がひびき、茶色い粉が降ってきました。
私たちがはなれたことで、義母の「ため込みグセ」はブレーキをうしない、アクセル全開で加速し続けていました。
このままでは、家が物理的に重みに耐えられなくなるか…火事でも起きれば、ひとたまりもありません。私は背筋が寒くなるのを感じました。
あとがき:ブレーキをうしなった末路
春子さんがどれだけ必死に「人間の尊厳」を守っていたかが露呈しましたね。義母にとっては、「しあわせな城」でも、実際は、家族にケガをさせる凶器…。
新くんにホコリを被ったぬいぐるみをわたそうとするシーンには、背筋が凍るような思いがします。自分たちが去った後の惨状を目の当たりにするのは、逃げ出した後ろめたさを、冷酷な現実へと変える瞬間でもありました。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
記事作成: ゆずプー
(配信元: ママリ)

