父の介護が本格的に始まったのは、私が仕事と家庭の両立に追われていた40代半ばのころでした。軽度の認知症と診断され、「まだ日常生活は自立している」と言われていた父。しかし、ある日を境に、私たち家族の関係は大きく揺らぎ始めました。
突然向けられた「食べさせてもらっていない」という言葉
ある日、父が強い口調で「何日も何も食べさせてもらっていない」と言いました。私は耳を疑いました。私は毎日、父のために食事を用意していました。作り置きもしており、冷蔵庫を確認すると料理はたしかに減っています。それでも父は「誰かが勝手に食べた」「自分の分はない」と言い張るのです。
事実を否定されるつらさと、どう説明しても届かないもどかしさ。胸の奥がぎゅっと締めつけられるようでした。
親戚からの疑いと、崩れかけた家族関係
さらに追い打ちをかけるように、父が親戚に「虐待されている」と電話をしていたことがわかりました。事情を知らない親戚からは責められ、兄弟間でも意見が割れました。「本当にちゃんと世話をしているのか」と疑われたときは、言葉を失いました。自分なりに精一杯やっているつもりだったからこそ、悔しさとむなしさが込み上げ、涙が止まりませんでした。
介護は体力だけでなく、心も削られていくのだと痛感しました。家族の信頼関係が、こんなにも簡単に揺らぐとは思ってもいませんでした。

