翌朝のために並んで買った限定パンを、駐車場で鉢合わせた頼子に「お金払うから譲って」とねだられ、断れずに渡してしまう。冴子は自分が都合のいい「コンビニ」扱いされていると痛感。引っ越しを機に縁を切ることを夫の拓哉と誓う。
想像以上の図々しいできごと
雪の日の一件以来、私は明確に距離を置くことに決めました。でも、彼女の「図々しさ」は私の想像の斜め上をいくものでした。
ある日、決定的な事件が起こりました。 翌朝の食パンを切らしていたのを思い出し、リョウを連れて近所のベーカリーでちょっといい食パンと、すぐ売り切れてしまう人気の「ねこちゃんパン」を運よくゲットして帰ってきた時のことです。
駐車場で、ちょうどスーパー帰りだという頼子ちゃん一家と鉢合わせました。
「あ、パンだ!パンパン!」
1歳のりりちゃんが、私の買い物袋を見てトテトテと寄ってきます。
「ねこちゃんもあるー!」
りりちゃんが無邪気に袋の中を見て言いました。
「あ、りりちゃん。これ、明日の朝ごはんなんだ。ごめんね」
私が苦笑いしながら袋を隠そうとすると、隣にいた頼子ちゃんがとんでもないパスを投げてきました。
珍しいパンを横取りされた気分
「えーねこちゃんパンも買えたのー?いいなぁ!りり、ねこちゃんパン好きなんだよねえ。私いつも売り切れで買えなくて…。ねぇ、何個買ったの?」
……え? 今、なんて言った?すごく嫌な予感がする…。
「冷凍できるから二斤買ったよ…。」
「いいなー!ねぇ、お金払うから一斤譲ってくれない?お願い!りりもほしいよね?」
りりちゃんは目を輝かせてこちらを見ている。りりちゃんにほしいか聞くなんてズルい。 ここで「絶対ダメ」と言い切る勇気が当時の私にはなく、結局、ねこちゃんパンを一斤あげることにしました。
お金もきっちり一斤分。何か見返りがほしいわけじゃないけど…すごくモヤモヤしました。

