“仕事ができるパパ”に救われたくなった女性
41歳のリオさん(仮名)は中学校の保護者会で委員を務めていました。夫は多忙で学校行事にまったく無関心。子どもの進路の話をしても、「任せるよ」の一言で終わるタイプ。リオさんは、教育は大事なことなのに、ずっと置き去りにされている寂しさがありました。
そんなとき、会議で一緒になったのが、コミュ力抜群の営業気質の片倉さん(仮名、44歳)でした。学校との連絡調整も上手で、保護者への説明もプレゼンみたいにすらすらとこなし、文句が出そうな場面をさらりと収めます。リオさんは「うちの夫にはない安心感」を感じたといいます。
会議後に3人で残り、資料を作成したあと、「おなかすいたからファミレスで食べて帰ろう」という流れに。うち1人が、子どもの塾のお迎えがあると言うので2人でファミレスへ。
「ワイン、300円なら一杯だけ飲みましょう。いつものねぎらいってことで」
お酒が入り、学校の話からプライベートな雑談になり、昔好きなタイプはどんな人だったかなどの大人の会話も弾みました。
その会話が、危険な入り口でした。次回以降の会合のときも、皆の目を盗んで2人で家路につくようになったのです。そして、SNSのDMで、「今日、手作りケーキあげていたでしょ、僕も食べたいなあ」「筋トレしているんですね。マッチョですね」などPTAとは関係ない交流が続きます。
そして、片倉さんは、リオさんをドライブに誘いました。郊外型大型ホームセンターに保護者会で使う事務用品を買いに行くという理由で。
「半休取るので3時間だけドライブしましょうよ」
そのドライブがリオさんには、楽し過ぎたのです。夫とはもう何年もデートらしいことはしていませんでした。ホットドッグを食べたり、テイクアウトしたコーヒーで乾杯したり、何気ない男女の触れ合いに胸がときめきました。
この関係が3カ月続き、ついにラブホテルに誘われてしまいます。そして4度関係を持った後で、リオさんが夫婦仲相談所に相談に来られました。「彼と一緒になりたい。離婚を見据えているので、円満離婚のアドバイスがほしい」と。
私はリオさんに「今の状況ではだめ!」と言いました。
「学校は恋愛市場じゃない。不貞はもちろん最低の行為。一歩譲って、体の関係になったくらいで離婚するとか考えないで。甘い! 相手の環境、家族のことも想像して」
私は話を続けました。
「ここで壊れるのは2つの夫婦だけじゃない。子どもの居場所、親としての信用、地域での顔、その全部です」
リオさんは黙り込みました。
その後、彼女から何の音沙汰もありませんでしたが、ある日、「うちの実家の母が倒れたとき、夫が献身的に支えてくれました。わたし、ばかでした。優しい人だったのに、見落としてしまっていました」「片倉さんに救われたかっただけでした。家庭の空洞を、外で埋めようとしていました」と連絡がありました。
不倫がバレたときに壊れるのは夫婦だけではない
PTA不倫、保護者会不倫が厄介なのは、職場不倫以上に“子どもの生活圏”と重なっていることです。夫婦げんかや慰謝料の問題だけで終わりません。学校行事、送迎、受験、部活、保護者同士のつながり全部に影を落とします。
表向きは周囲が見て見ぬふりをすることもあるでしょう。水面下では確実に信用が削られます。子どもは大人が思う以上に空気を読みます。「何となく家が変」「お母さん、あの人の話ばかりする」「お父さんがピリピリしている」という違和感は、ちゃんと伝わります。
さらに、もし配偶者に発覚すれば、法的な問題にも発展し得ます。一般に、不貞を理由とする慰謝料は、離婚しない場合で50万~150万円程度、離婚に至る場合で100万~200万円程度が一つの目安とされています。
また、厚生労働省の2024年人口動態統計によると離婚件数は18万5895組で、前年より2081組増え、2年連続の増加となりました。夫婦が壊れる引き金は1つではありませんが、不倫がその導火線になるケースは珍しくありません。
PTAや保護者会で心が動くこと自体は、人間だからあるのは仕方がありません。でも、心が動いたことと、関係を進めることはまったく別です。
相手にときめいたのではなく、「分かってもらえた」「役に立てた」「女性として、男性として見てもらえた」という感覚に酔っているだけのことも多いのです。
ならば、やるべきことは不倫ではありません。視線の先を不倫相手からパートナーに切り替えてください。夫婦の会話を立て直すのが先決であり、自分の人生の潤いを、家庭外の秘密に頼らず取り戻すことです。
先述のメイサさんも、リオさんも、踏みとどまりました。大人の理性は、”ときめき”に勝てます。
しかし、修復不能なほど夫婦関係がこじれていたら、PTA不倫に沼はまりし、信用を失う人へと変貌してしまいます。まずは自分の夫や妻を見つめ直し、何が足りないのか、関係がこじれる前に向き合ってみるのです。
