アトピー咳嗽は、長く続く咳の原因の一つとして知られている病気です。発熱や痰を伴わない乾いた咳が続くにもかかわらず、胸の音に異常がみられず、喘息のようなゼーゼー音も出ない点が特徴です。そのため、風邪が治りきっていない、年齢のせいで咳が出やすいなどと受け止められ、受診が遅れる方も少なくありません。アトピー咳嗽は、アレルギー体質と関係が深く、気道の咳に関わる神経が過敏になることで症状が続くと考えられています。原因や病態を正しく理解し、適切な治療を行いましょう。
この記事では、アトピー咳嗽の症状や咳が続く理由、医療機関での治療法に加え、日常生活で意識したい過ごし方を解説します。

監修医師:
林 良典(医師)
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医、禁煙サポーター
【診療科目】
総合診療科、老年科、感染症、緩和医療、消化器内科、呼吸器内科、皮膚科、整形外科、眼科、循環器内科、脳神経内科、精神科、膠原病内科
アトピー咳嗽(がいそう)の症状

アトピー咳嗽とはどのような病気ですか?
アトピー咳嗽は、痰や発熱を伴わない乾いた咳が長く続く病気です。息苦しさやゼーゼーとした音は出ず、胸部レントゲンや聴診でも大きな異常がみつからないことが多い点が特徴です。そのため、風邪が治りきっていない状態と受け取られることもあります。この病気はアレルギー体質と関係しており、アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎をもつ方にみられることがあります。咳以外の症状はほとんどなく、長く続く咳が主な症状です。
咳がでやすい時間帯や状況はありますか?
アトピー咳嗽の咳は、特定の刺激によって出やすくなる傾向があります。夜間や早朝に咳が出やすい方もおり、就寝中や起床時に咳き込むことで睡眠が妨げられることがあります。また、冷たい空気を吸い込んだとき、会話中、軽い運動をしたとき、たばこの煙や香料などの刺激に触れた場面で咳が誘発される場合もあります。
アトピー咳嗽と咳喘息、喘息の違いを教えてください
アトピー咳嗽は、気道が狭くなる病気ではありません。咳を引き起こす受け取り口である咳受容体や、咳を起こす反射の反応が過敏になり、乾いた咳だけが長く続きます。息苦しさやゼーゼー、ヒューヒューといった音は出にくく、呼吸機能検査でも大きな異常が確認されないことがあります。
咳喘息は、気道が刺激に反応しやすく、刺激をきっかけに気道が一時的に狭くなる状態が関係します。咳が主な症状で、息苦しさや喘鳴ははっきりしないことがありますが、気管支を広げる薬(β2刺激薬)で咳が改善しやすい点が手がかりになります。
喘息は、気道の炎症によって気道が狭くなり、空気がとおりにくくなる病気です。咳に加えて、ゼーゼー、ヒューヒューという音や息苦しさが出ることがあり、継続した治療が必要です。
アトピー咳嗽の咳が続く理由

アトピー咳嗽で咳がでるメカニズムを教えてください
アトピー咳嗽は、気道が狭くなることが原因ではなく、咳を起こす仕組みが敏感になることで咳が出ます。気道の表面にアレルギーに関係した炎症が起こると、炎症に関わる細胞が集まり、ヒスタミンなどの物質が増えます。その影響で、気道の表面にある咳のセンサーや神経が刺激に反応しやすくなり、少しの刺激でも咳が出やすい状態になります。
なぜ咳が長く続くのですか?
アトピー咳嗽は、気道の表面の炎症が落ち着くまでに時間がかかるため、咳のセンサーが敏感な状態が長引きやすいです。咳が続くと気道の表面がこすれるような刺激を受け、咳が出やすい状態が維持されることがあります。風邪をきっかけに始まった場合でも、感染が治まった後に気道の表面の状態が戻りきらず、咳だけが残ることがあります。また、咳が軽くなった段階で治療を自己判断で中断すると、咳がぶり返して経過が延びることがあります。
咳が長く続くことで身体にはどのような影響がありますか?
アトピー咳嗽の咳が続くと、咳の動作を繰り返すことで胸や脇腹、背中の筋肉に痛みが出ることがあります。強い咳が長く続いた場合には、肋骨に負担がかかり、まれに疲労骨折を起こすこともあります。また、夜間や早朝に咳が出ることで睡眠が妨げられ、日中の疲労感や集中力の低下が起こりやすくなります。咳が続くことで喉の違和感を覚えたり、会話や仕事に支障を感じたりする場合があります。

