大手法律事務所から史上最年少の女性市長(当時)、そしてスタートアップ起業家へ。越直美氏(BUSINESS LAWYERS AWARD 2025 ガバナンス改革部門賞、主催:弁護士ドットコム)が設立したOnBoard株式会社は、女性を中心に約2200人の社外役員候補を擁し、取締役会の多様性向上を推進する。「私にしかできないこと」を追求し続けるキャリアの軌跡を聞いた。
●「氷河期」が人生を変えた
大手法律事務所から史上最年少の女性市長(当時)、そしてスタートアップ起業家へ—。社会への強い問題意識を感じさせる経歴だが、意外にも「もともとは社会問題への関心は薄かった」という。
そもそも弁護士になったのも夢や憧れからではなかった。いわゆる就職氷河期世代。女性の先輩・友人が民間就職を諦め、公務員や士業を目指す姿に影響された。「氷河期じゃなかったら弁護士にはなってなかったでしょうね」
仕事内容もよく知らなかったといい、受験には3度失敗。転機になったのは西村あさひ法律事務所でのインターンだった。M&Aなど、企業法務という仕事の存在を知り、「スケールの大きな企業案件にかかわり、日本経済を支えたい」と目標ができた。
次の試験で無事合格。憧れだったM&Aなどの仕事に没頭した。「とても忙しかったですが、希望していた仕事で充実していました」。しかし、社会のことを考える余裕はなかった。
●留学で変わった「当たり前」
次の転機は弁護士6年目の米国留学だった。当時は2008年の大統領選の真っ只中。バラク・オバマ候補がロースクールの卒業生だったため、学内は異様な熱気に包まれていたという。年下の学生たちが「Change」のプラカードを掲げて奔走する姿に感化された。
さらに衝撃だったのが、修了後に出向した現地法律事務所での光景だ。男性弁護士が育休を取り、女性もキャリアを継続している。一方、日本では第1子出産で6割ほどの女性が仕事を辞めていた。
「もし時間に余裕があっても、日本にいたままだったら疑問を持てなかった。環境を変えたから、『当たり前じゃないんだ』と思えたし、『実は変えられるんだ』と思えるようになったんです」
異文化を知ったことで、学生時代に経験した就職の男女格差や、祖母の介護で仕事を辞めた母の姿など、違和感を覚えつつ「当たり前」と思ってきたものが、改善可能な「社会問題」に変わった。日本の女性が置かれた現状を変えたい—。帰国後の2012年、保育園の増設などを公約として、36歳で地元の滋賀県大津市長に当選した。

