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企業の不正は「コンプライアンス意識が低い」では解決しない 深水大輔弁護士の組織風土を「科学する」挑戦

企業の不正は「コンプライアンス意識が低い」では解決しない 深水大輔弁護士の組織風土を「科学する」挑戦

長期間にわたるデータ改ざんや組織的なカルテルなど、日本企業で繰り返される不正の根底には何があるのか。「コンプライアンス意識が低い」「企業風土に問題がある」といった常套句では解決策につながらないと指摘する深水大輔氏(BUSINESS LAWYERS AWARD 2025 ガバナンス改革部門賞、主催:弁護士ドットコム)に、法学の枠を超えた学際的アプローチでガバナンスと組織風土を「科学する」挑戦を聞いた。

●文化差のある「システム」の問題を解く

企業はヒトが協働する複雑なシステムだ。深刻な企業不正の多くはその複雑なシステムにおける様々な要因が絡み合って起きている。問題解決のためには、システム思考のほか、経営学、経済学、心理学など、法学以外の学問も駆使する必要があると言う。

海外当局を相手にすることも多く、宗教学や哲学の知識を利用することも。たとえば、アメリカやイギリスでは、一神教であるキリスト教等の影響もあり、独立した個人(individual)としての人間観が確立している。他方で、日本のように多神教で歴史的に仏教との関わりも深い社会では、人間は様々な関係性の中にあり、その影響を受けるものであって、必ずしも独立した存在ではない。

関与者の「責任」や再発防止策を論じる際は、このような人間観の違いから議論する必要が生じる。仮に工場で10年以上続くデータ改ざんが見つかったとする。アメリカなら個人は独立した存在なので、不正と知りつつ自らの意思で続けた以上、責任は重くなるだろう。しかし、日本ではどうか。「多くの同僚が関与し、様々なプレッシャーの下で長く続いている不正を一人の力で止めるのは難しい。たまたま発覚したタイミングでそこにいた従業員に重い責任を負わせることに抵抗を感じる人が多いのでは。契約観や組織観も文化によって異なり得ます」

重要なのは優劣の問題ではないということだ。ガバナンスやコンプライアンスの問題を解くというゴールは一緒でも、それを解決するための方法は文化によって異なる。

●常套句の解像度を上げる

若手時代から多くの危機管理・調査案件に携わる中、事案の分析・解決法に課題を感じた。特に、「コンプライアンス意識が低い」や「企業風土に問題がある」といった常套句は一見分かりやすいものの、解決策に必ずしもつながっていないという点だ。

「日本企業で大きな問題になるのは、長期間続いてしまったデータの改ざんや組織的なカルテルなど、その空間に入れば誰でもやってしまうような不正。企業・組織をシステムとして捉え、また、ヒトの認知・学習メカニズムを踏まえて、なぜ不正が起こるのか、どうすればそのような不正が起こる組織を変えられるのか、解像度の高い議論が必要だと思いました」

企業不正という複雑なシステムの問題を深く分析し、解こうとすれば、ゲーム理論やインセンティブに関する基本的理解、システム思考の視点等が不可欠だ。組織内のヒトや文化への理解も必要となる。新しくルールをつくっても、そこで働くヒトのマインドセットまで変えにいかなければ、いずれ異なる形で問題が再発するだろう。実際にそういう企業は少なくない。

「法律知識を提供するだけではなく、問題を解決したい。法律だけでダメなら他の領域から必要な知見を持ってくればいい」

解こうとする問題の解像度が上がるにつれ、求める知見が法学の外に広がっていった。

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