●ガバナンスを捉えなおす
日本では企業に対する訴訟や法執行が少なく、ガバナンスの質を問われる機会が乏しい。機会がないので、外見を取り繕う行動が最適化し、いざ蓋を開けると中身は空っぽということも珍しくない。状況打破にはガバナンス自体を捉えなおす必要があるという。
「外から言われてではなく、内発的な動機づけが必要。外部環境が刻々と変化する中、当該企業が良い製品・サービスを提供しながら長期的に稼ぎ、社会貢献を続けるために、どのような組織・仕組み・ヒトをつくりたいのか。ありたい姿を言語化し、その実現に向けて日々試行錯誤する営み全体をガバナンスと捉えなおすべきです」
人の価値観や行動様式をいかにありたい姿にデザインするかという点で、「実効的なガバナンス」と「健全な組織風土」は重なるという。経営幹部と、その企業の過去(これまで)と未来(これから)について対話し、「ありたい組織風土」を言語化する。また、「匠」や「道」の思想、高い協調性など、日本文化の強みを組織づくりに活かすことも重要だ。最近では、不祥事に関係なく、組織風土づくりの相談が増えているという。 実践の場として、2024 年 12 月には京都大学と連携した「NO&T Data Lab 株式会社」も設立。利用企業は心理学や行動経済学などに基づいた課題解決を得られ、研究者は企業のリアルな問題に触れたり、企業の実データを分析したりする機会を得られる。
ガバナンスの課題に対し、法律家、学者、コンサルタント、経営者と拡張していく自身のアプローチについて、「周りからはクレイジーに見えるでしょうね」と笑う。だが、その言葉には新しい専門家像を切り拓く自負が滲んだ。
【プロフィール】
ふかみず・だいすけ 東京大学法科大学院修了。 2008年、弁護士登録。実務の傍ら、信州大学特任教授等として企業犯罪や組織風土の研究にも取り組む。2024年からは NO&T Data Lab 株式会社代表取締役。2025年から京都大学特任教授。2025年「日経弁護士ランキング」コンプライアンス部門1位など、受賞歴多数。

