強迫性障害は、不安やこだわりが強くなりすぎることで、日常生活に支障をきたす心の病気です。どのような症状が現れると強迫性障害なのかがわからない、または受診するべきか迷っているなどの悩みを抱える方は少なくありません。
本記事では、強迫性障害の特徴や代表的な症状、受診の目安、診断基準、治療方法、日常生活で気を付けるポイントを解説します。

監修医師:
前田 佳宏(医師)
・精神科/心療内科医
・精神保健指定医
「泣きたくなったら壁を押せ」著者
大人と子どもの双方で、トラウマや愛着障害に心理療法的アプローチを用いる医師。これまでのべ3,000人以上の臨床に携わる。
島根大学医学部卒業。その後、東京大学医学部附属病院精神神経科に入局、東京警察病院や国立精神神経医療研究センター等を経て、児童精神科外来を3年間、トラウマ専門外来を2年間担当。著書『泣きたくなったら壁を押せ』(サンマーク出版、2026年)では、心理療法のプロセスを物語として描き、私たちの感情の奥にある“適応の物語”をたどった。その視点をともに探る場として、オンラインコミュニティ「しなここメイト」を主宰。cotree顧問医。産業医。日本小児精神神経学会所属。
強迫性障害の概要

強迫性障害とはどのような病気ですか?
強迫性障害は、強い不安やこだわりによって日常生活に支障が生じる心の病気です。「ドアの鍵をきちんとかけただろうか」「ガスを止め忘れていないだろうか」と気になり、確認のために家に戻った経験は多くの人にあります。しかし、強迫性障害では何度確認しても安心できない、特定の数字や手順に強くこだわらなければ落ち着かないなどの症状が現れます。
強迫性障害は適切な治療によって改善が期待できる病気です。不安やこだわりが強くなり、生活に支障を感じている場合は医療機関を受診しましょう。
強迫性障害の症状の特徴を教えてください
強迫性障害は、「やめたいのにやめられない」「考えたくないのに頭から離れない」などの状態が続く病気です。本人は気にしすぎと理解しているにもかかわらず、不安やこだわりが強くなり、同じ確認や行為を何度も繰り返してしまいます。強迫観念と強迫行為の2つが関係しています。強迫観念とは、意志に反して頭に浮かび続ける考えやイメージのことです。内容が不合理だとわかっていても振り払うことができず、強い不安や苦痛を伴います。
強迫行為は、不安を打ち消すために繰り返してしまう行動や心の中での儀式です。「やりすぎだ」と理解していても、不安を抑えるために行わずにはいられません。
代表例は、汚れや細菌への強い恐怖から何度も手洗いや入浴を繰り返す症状です。また、「誰かに危害を加えてしまったかもしれない」と繰り返し不安になり、事件や事故の報道を確認したり周囲に何度も尋ねたりするケースもあります。
戸締まりやガス栓、電気のスイッチを何度も確認する確認行為や、決められた順番で物事を行わないと強い不安を感じる儀式行為も典型的です。
強迫性障害は誰でもなる可能性がある病気ですか?
強迫性障害は、誰でも発症する可能性がある病気です。発症には、性格傾向だけでなく、ストレスや生活環境の変化、脳内の神経伝達物質の働きなど、さまざまな要因が関与していると考えられています。
参照:『強迫性障害』(国立精神・神経医療研究センター)
強迫性障害の受診サインと検査・診断

どのような症状がみられたら受診を検討した方がよいですか?
次の状態が続いている場合は、早めの受診を検討すべきです。戸締りやガスの元栓を何度も確認してしまい、外出に時間がかかる
手洗いや消毒をやめたいのにやめられない
特定の数字や順番に強くこだわってしまう
「誰かを傷つけてしまうのではないか」などの考えが繰り返し浮かび、不安が強い
自分でも「やりすぎ」とわかっているのにやめられない
精神科や心療内科などの診療科を受診するとよいでしょう。
強迫性障害が疑われるとき、病院ではどのような問診や検査が行われますか?
強迫性障害は、医師による問診をもとに診断されます。質問内容の例は下記のとおりです。どのような考えやイメージが繰り返し浮かぶのか
それを「望ましくない」「やめたい」と感じているか
不安を打ち消すためにどのような行動や心の中の儀式を行っているか
1日にどのくらいの時間を費やしているか(1時間以上かどうか)
症状によって日常生活や仕事、学業に支障が出ているか
症状が始まった時期やきっかけ
服用中の薬や既往歴
実際の質問内容は、症状やこれまでの病歴などによって異なります。
強迫性障害の診断基準を教えてください
強迫性障害の診断では、強迫観念や強迫行為がみられることに加え、生活への影響度がみられます。強迫観念や強迫行為によって多くの時間を費やしている(1日1時間以上が目安)、日常生活・社会生活に明らかな支障が出ている、強い苦痛を感じているなどの場合に診断されます。
参照:『強迫性障害』(国立精神・神経医療研究センター)

