受刑者がハサミやカミソリを手に、一般客の髪を切る──。そう聞いて驚く人もいるかもしれない。
川越少年刑務所では、服役中の若者が理容師の国家資格を取得するための職業訓練がおこなわれている。出所後の再犯を防ぎ、自立した生活を送るための「手に職」を身につける取り組みだ。
受刑者たちを日々指導しているのは、自らも理容師の資格を持つ作業専門官だ。技術だけでなく、社会に出るためのマナーや責任感をどう教えているのか。現場の思いを聞いた。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●受刑者が理容師免許を取った後の進路
──受刑者が理容師の資格を取ることは難しい?
作業専門官:技術面については練習量が非常に多いので、それが原因で落ちるという話は過去に聞いたことがありません。落ちるとしたら衛生面ですね。
たとえば、顔を剃ったあとにカミソリを拭いたティッシュをきちんとゴミ箱に入れられるか。消毒済みの道具を使ったあと、誤ってまた“消毒済み”の場所に戻してしまわないか。
そうした細かな部分での減点が大きいので、緊張して手順を忘れてしまうと、簡単に不合格になってしまいます。
──資格を取ることで、出所後の仕事を見つけやすくなる?
作業専門官:美容・理容業界は人手不足で、「来てほしい」という店は多いです。仕事を選ばなければ、就職できる可能性はかなり高いと思います。
刑期の関係で、資格を取ってすぐに出所する人もいます。あとは、ここでどれだけ経験を積めるかによって、仕事の幅は変わってくると思います。

●指導する側の思い「まずは社会人としてのマナーを」
──この理容室は一般の方も利用できる。安全面はどう管理している?
作業専門官:ハサミやカミソリなどの刃物を扱うので、道具の数が合っているかどうかの確認は徹底しています。
カットの練習ではイヤーガード(耳カバー)を着けてハサミが当たらないようにしたり、消毒の方法も1年生の段階から繰り返し指導したりしています。事故が起きないよう、安全指導は細かくやっています。
──指導するうえで大事にしていることは?
作業専門官:理容師としての技術以前に、まずは社会人としての基本を身につけてもらうことです。安全意識や道具を大切にする姿勢、あいさつやマナーといった部分です。


