心不全は再発しやすい病気だからこそ、日々の生活習慣や運動の仕方が予後を大きく左右します。無理のない範囲で心臓に負担をかけず、適切に体力を維持することが重要です。そこで、再発を防ぐために押さえておきたい生活のポイントや、安全に行える運動のコツを久我山ハートクリニックの今村先生が解説します。
※2026年1月取材。
≫【1分動画でわかる】知っておきたい、心不全を再発しやすい特徴
監修医師:
今村 泰崇(久我山ハートクリニック)
2009年、日本大学卒業。東京女子医科大学病院、同大学病院循環器内科、済生会熊本病院、東京女子医科大学八千代医療センター、立正佼成会附属佼成病院(現・杏林大学医学部付属杉並病院)、ニューハート・ワタナベ国際病院を経て現職。医学博士、日本内科学会認定 総合内科専門医、日本循環器学会認定 循環器専門医、補助人工心臓治療関連学会協議会 植込型補助人工心臓管理医、日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)認定医、日本経カテーテル心臓弁治療学会 TAVR実施医、難病指定医、身体障害者福祉法指定医(心臓機能障害)、日本禁煙学会認定 禁煙指導医、CPAP療法士、日本医師会認定産業医。
心不全はなぜ再発するのか?
編集部
心不全は、一度良くなっても再発しやすいと聞きます。なぜでしょうか?
今村先生
そもそも心不全は完治する病気ではなく、悪化と改善を繰り返す慢性疾患だからです。治療によって症状が落ち着いても、心臓そのものの機能が元に戻るわけではありません。そのため、生活習慣の乱れや疲れ、感染症をきっかけに、再び心臓に負担がかかると再発しやすいのです。
編集部
再発のきっかけになりやすい要因は何ですか?
今村先生
多いのは塩分の取り過ぎ、水分管理の乱れ、薬の飲み忘れなどです。また、調子が良いからといって自己判断で服薬を中断することも原因になります。それから感染症、過労、睡眠不足、急な気温変化、過度な運動や運動不足も再発の引き金になります。
編集部
自覚症状がないまま再発することもありますか?
今村先生
あります。むくみや息切れといった典型的な症状が出る前に、体重増加や疲れやすさなど、軽い変化から始まることが多いですね。そのため、「少し変だな」という段階で気付けるかどうかが、再発予防の大きなポイントになります。
編集部
再発を繰り返すと、どうなってしまうのでしょうか?
今村先生
心不全は再発を重ねるたびに心臓の働きが少しずつ弱くなっていき、入退院を繰り返すようになり、次の入院までの期間もだんだん短くなります。こうした状態が続くと、日常生活の負担が増え、将来の見通しにも影響を及ぼします。
再発を防ぐために必要な生活習慣
編集部
心不全の再発を防ぐために、最も重要な生活習慣は何ですか?
今村先生
医師から処方された薬をきちんと飲み続けることです。心不全の薬は、症状を抑えるだけでなく、再発を防ぐ役割があります。
編集部
食事で特に気を付けることはありますか?
今村先生
塩分制限が基本です。塩分を摂取し過ぎると体に水分がたまり、心臓の負担が一気に増えます。栄養バランスを意識しつつ、だしなどを上手に使いながら薄味に慣れることが塩分制限を長く続けるコツです。また、急に水分をたくさん取ると心臓に大きな負担をかけることになるので注意しましょう。
編集部
そのほか、日常ではどのようなことをしたらよいでしょうか?
今村先生
日々、体重を測定することをおすすめします。短期間で1〜2kg以上増えた場合は、体に水分がたまっているサインかもしれません。また、息切れ、むくみ、夜間の咳なども再発の初期サインです。日々の変化を記録することが再発予防につながります。
編集部
睡眠や休養も影響しますか?
今村先生
大きく影響します。睡眠不足や過労は、自律神経を乱し、心臓に余計な負担をかけます。無理をし過ぎず、体調に合わせて休むことも治療の一部と考えるとよいでしょう。
編集部
ほかに気を付けた方がよいことはありますか?
今村先生
「睡眠時無呼吸症候群」ですね。心不全を再発させる大きなリスクの一つであるため、睡眠時無呼吸症候群と診断されたら心不全と並行して治療を行うことが必要です。また、フレイルにも注意しましょう。フレイルとは「健康な状態」と「要介護状態」の中間にある虚弱な状態のことで、加齢などにより、心身が著しく衰えた状態を意味する言葉です。進行すると心不全の発症や悪化を招きやすくなります。再発予防のためにも、無理のない範囲で適切な運動を続けることが大切です。

