ムーラン・ルージュ, Public domain.
映画『ムーラン・ルージュ』の舞台となったパリのキャバレー
映画『ムーラン・ルージュ』は作家を目指してパリへやってきた青年・クリスチャンと、キャバレー「ムーラン・ルージュ」の花形スターで高級娼婦・サティーンの恋を描いています。
キャバレーとは、音楽やダンスのショーを楽しみながら酒を飲む娯楽施設のこと。芸術家や作家、ダンサーたちが集まる夜の社交場としてにぎわっていました。
二人はやがて強く惹かれ合いますが、ショーへの出資と引き換えにサティーンを愛人にしようとする公爵の存在により、その関係は危ういものに。華やかな舞台の裏で進む、危険な恋の行方も見どころとなっています。
ロートレック, Public domain.
運命に抗おうとするクリスチャンの理解者として登場するのが、画家のロートレックです。彼はムーラン・ルージュの常連客でもあり、新しいショーの構想を練りながら歌詞づくりに頭を悩ませていました。そんな彼の前で、クリスチャンが即興で歌を披露。その才能を高く評価したロートレックは、ムーラン・ルージュの経営者ジドラーにクリスチャンを認めさせる計画を立てます。
このロートレックは、映画のために作られた人物ではありません。彼は実在したフランスの画家であり、実際にパリ・モンマルトルのキャバレーに通い詰め、ダンサーや観客たちの姿を数多く描きました。映画の舞台となる華やかな夜の世界は、彼の作品の中にもしっかりと残されています。
ムーラン・ルージュを描いた画家・ロートレック
ロートレックは酒場や娼館に集まる人々を題材に、数多くの作品を残しました。『ムーラン通りのサロン』のような絵画だけでなく、『ムーラン・ルージュのラ・グリュ』などのポスターも手がけています。特に大胆な構図と色使いによるポスターは当時の街を彩り、彼が“偉大なる芸術家”と呼ばれるようになったきっかけの一つです。
『ムーラン通りのサロン』
『ムーラン通りのサロン』-アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 1894年, Public domain.
『ムーラン通りのサロン』は、ロートレックが1894年に制作した絵画です。描かれているのは、娼館で客を待つ6人の女性たち。彼女たちはそれぞれ少し距離を置いて座り、静かな表情を浮かべています。鮮やかな色彩とは対照的に、どこか落ち着いた空気が流れているのが特徴です。
作品から感じられるのは、きらびやかな世界の裏にある、薄暗く孤独な時間です。しかし、女性たちの姿は決して不憫に描かれているわけではありません。ロートレックは彼女たちの日常の一瞬を見つめながら、その中にある人間らしい美しさや芯の強さを静かに描いています。
『ムーラン・ルージュのラ・グリュ』
ロートレック『ムーラン・ルージュ、貪欲な女』(ポスター), Public domain.
『ムーラン・ルージュのラ・グリュ』は、ロートレックが1891年に制作したポスターです。ムーラン・ルージュの経営者であるシャルル・ジドレールの依頼で作られたもので、ロートレックが初めて手がけた版画作品でもあります。ちなみに、このジドレーは映画に登場するジドラーのモデルになった人物です。
ポスターの中央には、ムーラン・ルージュの看板ダンサーだったラ・グリュが描かれています。手前にはパートナーのダンサーが大きく配置され、奥の観客たちの姿は影だけで表現。大胆な構図とシンプルな色使いによって、観るものに舞台の熱気を感じさせる作品です。
La Goulue, Public domain.
