華やかな夜の社交場―ムーラン・ルージュ
ムーラン・ルージュは、1889年に誕生しました。名前はフランス語で「赤い風車」を意味し、建物の屋根には実際に赤い風車が掲げられています。華やかなショーが人気を集め、特にフレンチカンカンは現在も世界的に有名なダンスです。ダンサーたちが足を高く上げ、ペチコートを翻す大胆な振り付けで、観客を熱狂させます。
ロートレックの作品、1895年, Public domain.
当時の舞台にはロートレックが描いたラ・グリュをはじめとした人気ダンサーが出演し、多くの客を魅了していました。
映画にも登場 “緑の妖精”に狂わされたロートレック
数々の名作を残したロートレックですが、わずか36歳でその生涯を終えています。彼の心身を衰弱させた原因として語られるのが、“緑の妖精”と呼ばれた酒、アブサンです。19世紀末のパリでは、多くの芸術家たちが好んで飲んでいました。
アブサン。グラスに添えられているのは専用のアブサンスプーン, Public domain.
映画『ムーラン・ルージュ』でも、クリスチャンがサティーンに会う前にアブサンを口にしたことで、ボトルに描かれた緑の妖精が幻のように現れる描写があります。
芸術家たちが愛した酒・アブサン
アブサンは、現在でもヨーロッパ各地で造られている薬草系のリキュールの一つです。19世紀のフランスでは多くの芸術家たちに好まれていました。透き通るような緑色とミステリアスな雰囲気から、“緑の妖精”という呼び名でも知られています。
そのイメージが広まった背景には、原料のニガヨモギに含まれる香味成分ツジョンの存在があります。ツジョンには幻覚などの向精神作用があるとされていたため、アブサンにはどこか幻想的なイメージが付きまとうようになりました。
マネ『アブサンを飲む男』, Public domain.
アブサンを題材にした作品として知られるのが、エドゥアール・マネが1859年に制作した『アブサンを飲む男』です。男のそばにはアブサンの注がれたグラスが置かれています。彼はアブサンに溺れていたともいわれており、当時の社会とアブサンとの関係を感じさせる作品となっています。
偽アブサンにより身を滅ぼす
アブサンのアルコール度数は、高いものでは89%を超えます。19世紀末のパリでは、安価な偽物も市場に出回ったことで多くの人々がアルコール中毒に陥り、社会問題化する事態となりました。かの有名なフィンセント・ファン・ゴッホも、偽アブサンによる中毒に悩まされていたという説もあります。
ロートレックは奔放な生活の中で梅毒を患い、さらにアブサンなどの強い酒によってアルコール依存症に陥りました。最終的には脳出血により、わずか36歳でその生涯を閉じます。 “緑の妖精”と称されるアブサンですが、その幻想的なイメージの裏には、芸術家たちの人生を狂わせた一面もありました。
