一つテンヤの釣り方
誘いはリフト&フォールが基本となる。
アンダーハンドキャストしてテンヤが着底したら糸フケを取り、小刻みに5回シャクってカーブフォール。
これを船下まで繰り返す。

リフト&フォール
「自分が、タイラバでこんなに多くのマダイを釣る日がくるなんて、想像していなかった……」
昼下がりの茨城県日立会瀬港でタックルを片付けながら遠い目で語るのは、ライターのタカハシゴーである。
足元のクーラーには、1kg弱という食べごろサイズのマダイが複数枚収められている。
ヨッシーことジャッカルプロスタッフの吉岡進さん率いるE2F取材班の中でも、ズバ抜けて釣りが下手な男である。
残念なことに、彼は記憶力が非常に悪い。
聞いた話は、その日のうちにきれいに忘れてしまう。
だから、毎回リセットされ、ゼロからのスタートとなる。
永遠にうまくならないシステムだ。
そんな彼にとって、唯一と言っていいほどゼロリセットされない釣りが、タイラバなのである。
何しろタイラバは、仕掛けを落とし、着底したら、一定速で巻き上げるだけだ。
実際にはその日のマダイのご機嫌に合った巻きスピードを発見したり、ウネリを相殺して一定の巻きスピードになるように工夫したり、途中で巻きスピードを変化させたり、タイラバのヘッドの重さや色、スカートの形状や色などなど、やりようは無限にある。
だが、基本的にはタダ巻き。
シンプルなので記憶力激悪のタカハシゴーでも、すぐにそれなりの形で釣りができるのだ。
「オレでもタイラバでこんなに釣れるとは……。この発見こそが、一番の『釣果』だったかもしれないな……」
やはり遠い目をしている。
成長した自分に驚いているのだ。

いいポイントに船が入ると次つぎにマダイがヒット
テンヤ、ジギング、タイラバフリースタイルでマダイを狙う
2月25日、茨城県日立会瀬港に集合したE2F取材班は、やや不安げな表情を浮かべていた。
前日の弁天丸は、4.5kgを頭に2kg、1.8kg、1.4kg、そして1.2kgを3枚と、目覚ましい釣果を上げていたからである。
「あれえ? 昨日はよかったんだけどね……」は、船釣りの合い言葉だ。
前日釣れていたからといって、今日釣れるとは限らない。
むしろ、今日は厳しい状況になることのほうが、なぜか多いのである。
もちろん、最初からあきらめていたわけではない。
それぞれにしっかりと準備をして、日立沖のマダイ釣りに臨んでいた。
弁天丸では、一つテンヤ、タイラバ、そしてジギングと、お好みの釣法でマダイ釣りに挑めるフリースタイルシステムだ。
阿部竜也船長によると、前日釣れた4.5kgはグリキン(緑と金)のジグだったそうだ。
「おお、ジグでしたか」
「ええ、ジグでした」
ヨッシーと阿部船長の会話を横聞きしながら、心の中で小さくガッツポーズを出していたのが、タカハシゴーである。
彼は「今日は巻きの釣りに徹する」と決めていたのだ。
ここはマダイの面白いところだ。
エビエサを付ける一つテンヤが圧倒的に有利なように感じるが、そうではないこともしばしばある。
ジグやタイラバのような巻きの釣りがよい釣果を出すことも多い。
永遠の初心者であるタカハシゴーには、それが信じられない。
確かにタイラバやジグなどタダ巻きの釣りは、細かいことを覚える必要がない、ありがたい釣法である。
だが一方で、「エサのほうがぜってぇ釣れるだろう」という思い込みから逃れられないのだ。
だからこれまでのタカハシゴーは、「釣法に縛りがないなら一つテンヤで底を狙う」の、一辺倒だった。
間違いなくアタリが得られて、間違いなく1枚は釣れる可能性が高いからだ。
しかしマダイ釣りは、外房大原に住む彼が最も慣れ親しんでいる釣り物の一つだ。
いくらなんでも、そろそろレベルアップしたい。
初の上、つまり初級者の中での上級者になりたい、という思いがあった。
5時半に港を離れた弁天丸は、シケ続きの中で奇跡的に穏やかな春の海を滑らかに走り、30分弱でポイントに到着した。
水深は30m前後。
8号の一つテンヤで釣り始めたヨッシーの横で、タカハシゴーはタイラバのような巻きの釣りで誘えるジャッカルの人気仕掛け、ビンビンスイッチを手にした。
「底は狙わない」という大きなチャレンジだ。
「初の上」を目指すタカハシゴーの、並なみならぬ決意が感じられた。

釣り場は日立沖の水深30~40m前後

