「それがダメなんだよ!」
言った直後に自分でもおどろくくらい、里奈に怒号をあびせていた。周囲の視線を感じたが、もう抑えきれなかった。
「“心の支え”って何?既婚者同士がそれ言って、何もないわけないじゃん!」
里奈の顔がこわばる。
「奈緒に何が分かるの?」
その一言に胸が痛んだ。分からない。でも──
「子どもたち、あそこで一緒にたのしそうに遊んでるよね?」
私は、遊具で遊ぶ子どもたちを指差した。無邪気に笑い、たのしそうに遊んでいた。
「この前みたいに…バレたらどうなる?今度こそ家庭、こわれるよ?里奈の子も拓也の子も、傷つくかもしれないんだよ?」
里奈はだまって視線を落とす。でも、完全には折れない。
「……大げさだよ」
その言葉が決定打だった。
「大げさじゃない!」
私ははっきり言った。
「もう家族を巻き込んでるの!拓也の奥さんに電話させた時点で…もう当事者でしょ?」
一瞬の静寂。里奈は何も言わなかった。
不倫を甘く見ている友人に一喝
「心の支え」という、一見なんの害もなさそうな言葉を盾にし、奈緒の忠告をのらりくらりとかわしていた里奈。ですが奈緒は、しびれを切らし、不倫をすることの代償を突きつけます。
あまりにも軽く考えている様子の里奈でしたが、奈緒の絶縁覚悟の発言に、心が揺れ動きます。
もう1人の当事者にも、現実を突きつける
その夜…まよった末、私は拓也にも連絡を入れた。正直、ふるえていた。でも、止められるのは今しかないと思った。
「電話なんてめずらしいね、どうした?」
いつもは話しやすく感じる拓也の口調も、今はいら立つ要素でしかなかった。
「突然ごめん。里奈と拓也の友人として、2人のことが大切だから言うね」
そう前置きして、私は深く息を吸った。そして、淡々と伝えるべきことを伝えた。
「里奈から、拓也との関係とかトラブルのこと聞いてる。お互いに家庭があるよね?2人の都合で家族を巻き込まないで。特に、子どもたちのこと…ちゃんと考えて」
淡々と話しつつも、自分でも分かるほど、その語気には静かで強い憤りが感じられた。拓也はだまったままだった。
「もし、2人が本気で一緒になるって言うなら…せめて、筋を通して。きちんと整理してからにして…」
そう言い切った後、しばらくの沈黙が続いた。
余計なことした?友だちをうらぎった?でしゃばりすぎた?そんな不安が込み上げてくる。でも、何もしないほうがもっと後悔する気がした。
鼓動が落ち着き始めたちょうどその時、拓也の声が沈黙をやぶった。
「……ごめん、ちゃんと考える」
私は通話を切った。スマホを置くと、一気に力が抜けて、興奮が冷めていく。「やるべきことは、した」そう思いたい。
でも、2人との関係は、もう前と同じじゃないかもしれない。
もしこれで、縁が切れたら?10年来の友人…。子ども同士のつながり。全部、こわれるかもしれない。
くらい部屋で、私は静かに泣いた。
私の行動が正しかったのかは、正直、分からない。でも、もう傍観者ではいられなかった。この先、2人がどんな形になるのか、想像するのがこわかった。
奈緒は、自分が悪者になってでも、友人の子どもたちのことを第一に考え、厳しい現実を突きつけます。パートナーを傷つけること、子どもにも影響があるかもしれないことを伝えます。

