息子が3歳で入園し、社会復帰を考えた美奈。以前は医療事務をしていたので、近所で同じような仕事をさがしはじめましたが…。
「扶養内パート」をはじめることに
「じゃあ、明日からよろしくね」
「はい!よろしくお願いします」
あたまを下げると、物腰やわらかな院長が、にこりと笑った。
55歳で近所にちいさな内科クリニックを開く男性は、とてもやさしそうに見える。家からも近いし、いい職場に出会えた。
私の名前は、西川美奈(31歳)。4年前、結婚を機に夫の地元に引っ越してきた。
息子は3歳になり、この春、幼稚園へ入園したばかり。
そんな中、空いた時間でパートを始めようと考えた。貯金もへらしたくないし、子育てだけの生活に窮屈さを感じている。
扶養内パートは生活費のためだけでなく、リフレッシュの意味合いもあったのだ。「また社会とつながってがんばろう!」と意気込んでいた。
だが、この時の私は、まだ、この職場にとんでもない"モンスター"がひそんでいることを知らなかった。
契約外の業務が発生
1か月後…。いそがしい出勤日に、それは起きた。
「西川さん、ちょっと来て!」
50代のベテランパートの山内さんに、診察室から呼ばれる。
受付業務で手いっぱいになっていた私が向かうと、彼女は思いがけない指示を出した。
「診察が立て込んでるから、検査室への案内と説明をして!そこの器具洗浄もお願いね!」
契約外の仕事のわり振りに困惑する。しかも、今まで経験したことのない内容で、まちがえると責任を問われそうなものだ…。
「え…でも、それは…」
「いいから!モタモタしてないで!」
彼女の声に圧倒され、見よう見まねで何とかこなした。
途中、患者から、わからない質問をされてこまる場面も出る。神経をすりへらし、気づけば退勤の時間を10分超過していた。
「あなた…もうちょっと学んでおいてね」
帰り際、山内さんに声をかけられる。
言い返す気力もないまま「はい…」とだけ答えて、タイムカードを押した。

