これは、ひとり暮らしの経験がない彼と同棲を始めてしばらく経ったときのお話です。彼と迎える冬、私は人生で初めてすき焼き鍋を買いました。しかしまさかこれが、「この人との結婚は無理だ」と確信する出来事のきっかけとなるとは、予想もしていませんでした。
失敗を許さない彼
夕飯を待つ彼のために、私はすき焼きの支度をしていました。
しかし、テーブルへ運ぼうと、取っ手を二つまとめて持ち上げたそのときです。鍋はバランスを崩し、床へとひっくり返ってしまいました。肉も野菜も無残に散らばり、ズボンは濡れ、私は先に着替えようと、急いで脱衣所へ。
急いで着替えを終えてキッチンに戻ると、そこには呆然と立ち尽くす彼がいました。「せっかくのお肉が台無しじゃないか」。
彼はそう呟くと散らかった具材を拾うこともなく、ただ見つめていました。
ため息まじりに…
そして私が謝るよりも早く、彼はため息まじりに「母さんはこんなミスしないよ。すき焼き鍋の使い方なんて、考えればわかることだろ」と言いました。
これまで実家で暮らしてきて、食事もずっと母に準備してもらってきた彼。自分ではすき焼きを作ったことはなく、これまでも家事に関して何ひとつ手伝おうともしてくれなかった彼が、失敗した私を母親と比べて責めるような言葉を放ったことに、私は言葉を失いました。
ため息交じりにこちらを見る彼の視線はあまりにも冷ややかで、私は込み上げてくる涙をこらえることができませんでした。

