「腎臓病」は、初期のうちは自覚症状がほとんどなく、気づいたときには病状が進んでいることも少なくありません。だからこそ、“早期発見・早期治療”がとても重要です。腎臓の負担を最小限に抑え、進行を防ぐために知っておくべきポイントを春日部大西毎日腎クリニックの大西先生に聞きました。
※2025年12月取材。

監修医師:
大西 剛史(春日部大西毎日腎クリニック)
2008年、東京医科歯科大学(現・東京科学大学)卒業。2016年、京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 医療疫学分野入学。同年、京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 臨床研究者養成コース受講生、9月より福島県立医科大学臨床研究イノベーションセンター臨床研究フェロー着任。2019年に博士号を取得し、春日部中央総合病院腎臓内科に赴任。2024年、一ノ割駅前休日診療所を開院。2026年4月、春日部大西毎日腎クリニックに名称変更・移転開院。
腎臓病は、なぜ早期に治療したほうがよいのか?
編集部
腎臓病は、なぜ「早期治療」が重要なのでしょうか?
大西先生
腎臓は一度機能が低下すると、元の状態に完全に戻すことが難しい臓器だからです。しかも、腎臓病は初期段階のうちはほとんど自覚症状がなく、気づいたときにはかなり進行しているケースが少なくありません。そのため、症状が出る前の段階で異常を見つけ、進行を食い止めることが何より重要になります。早期に治療を始めれば、腎機能の低下スピードを遅らせ、透析や腎不全といった重い状態を防げる可能性が高まります。
編集部
症状がないのに治療が必要なのはなぜですか?
大西先生
腎臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、かなり悪くなるまで痛みや不調を感じにくい特徴があるからです。症状が出てから治療を始めると透析が必要になることもあり、できることが限られてしまうのが現実です。そのため、症状がなくても治療が必要なのです。
編集部
早期治療した場合、どんなメリットがありますか?
大西先生
まずは、透析導入を回避・延期できる可能性が高まります。また、腎臓病は心臓病や脳卒中とも深く関係しているため、全身の健康リスクを下げる効果もあります。日常生活を大きく制限される前に対策を始めることで、仕事や家庭生活を続けながら治療ができる点も大きなメリットといえます。
編集部
早くから治療を始めることで、たくさんのメリットがあるのですね。
大西先生
はい。近年は新しい薬剤も登場し、過去には治せなかった病気も治療ができるようになりました。薬剤の効果を最大化するためにも、定期的に健康診断や血液検査、尿検査を受けて、早期発見に努めてほしいと思います。
気をつけたい腎臓病の種類
編集部
腎臓病にはいくつか種類があるのでしょうか?
大西先生
さまざまな種類があります。特に患者数が多いのが慢性腎臓病(CKD)です。CKDは、腎機能の低下や尿異常が3カ月以上続く状態を指し、糖尿病性腎症、高血圧による腎障害、慢性糸球体腎炎などが原因で起こります。進行すると透析が必要になるため、早い段階での発見と管理が重要です。
編集部
生活習慣病と関係の深い腎臓病はありますか?
大西先生
特に注意が必要なのが、糖尿病性腎症と高血圧性腎障害です。糖尿病や高血圧が長く続くと、腎臓の細い血管が傷つき、徐々に機能が低下します。これらは生活習慣の影響を強く受けるため、血糖・血圧の管理や食事、運動習慣の見直しが治療の中心になります。腎臓が悪い人は、一般の人に比べて血糖や血圧の管理を厳格におこなう必要があります。
編集部
若い人でも腎臓病になることはありますか?
大西先生
あります。慢性糸球体腎炎や遺伝性の腎疾患は、世代を問わず発症する可能性があります。特に若い世代の場合、「自分はまだ若いから大丈夫」という過信から体調の変化を軽視し、結果として病気の発見を遅らせてしまうケースが少なくありません。特に、たばこを吸う人は要注意ですね。年齢に関わらず、尿検査でタンパクや血尿を指摘された場合は、早急に精密検査を受けるようにしてください。
編集部
一度異常が出たら、ずっと通院が必要ですか?
大西先生
個人差はありますが、腎臓の病気は多くの場合、定期的なフォローが必要になります。ただし、「一生、重い治療を続けなければならない」というわけではありません。初期の段階であれば、生活習慣の改善と経過観察だけで安定する人も少なくありません。
編集部
「一度腎臓病になったら、ずっと治療が必要」というわけではないのですね。
大西先生
そうですね。ただし、症状が軽く見えても、腎機能が徐々に悪化していく人がいるのも事実です。大切なのは自己判断で通院をやめないこと。腎臓病は短期間で治す病気ではなく、長く付き合いながら無理のない形で管理していく症状と考えてください。定期的な通院を続けることが、早期発見と悪化の予防につながります。

