クリニックの医療事務としてはたらき始めた、美奈。しかし、そこは「責任感のない院長」と「責任を負いすぎるベテランパート」が支配する場所で…。
はたらいてから一年が経過した
「クリニックを辞めようか」と考えたが、扶養内で希望の時間にはたらける場所はここしかない。
コンビニやスーパーなどもあるにはあるが、未経験の仕事だし、医療事務の業務は好きなのでつづけたいと思う。
結局、違和感を持ちつつも、はたらき始めてから、ずるずると一年近く過ぎた。
あいかわらず、契約外の仕事を振られるが、繁忙期以外はかわすようにしていた。すると、私に対するヘイトの声が、一部のパートから上がるようになったのだ。
ある日、院長から「相談があるんだけど」と呼び出され、こんなことを言われた。
「こまるよ。皆がしている業務を…君もしてくれなきゃ」
カチンときた。私は契約以外の仕事をするのがイヤだと訴えたが、彼は「他と足並みをそろえろ」と言うばかりだ…。
ついには、変な交渉まで持ち出してきた。
「わかった、わかった!時給を上げればいいんでしょ」
どうしてそうなるのか…。何でもお金で解決しようとする魂胆に、いや気がさす。
だが、一瞬考えた。時給を上げてもらえば、時間をへらしても、今までどおり稼げる。
空いた時間で転職活動をすればいいのだと思いついた。
給料アップを条件に納得するも…
話し合いの末、現在の業務をつづけるとともに、以前より100円の時給アップが成立した。
その分、一日、出勤日をへらして、「転職活動」に当てようと考えた。しかし、スムーズにことは進まなかった。
「院長…このままだと、扶養から外れてしまいます」
シフトから私の名前はへらず、それどころか多くなったのだ。
このままでは、夫の扶養から外れてしまう…。あせった私が相談すると、院長はけわしい表情をうかべた。
「君ねえ、ちょっとワガママすぎるんじゃない?あれもこれもしたくない…時給上げたのに文句を言う。君だけの職場じゃないんだよ?」
院長が言うことはもっともらしそうに聞こえるが、的外れだ。
(契約内容を超えてはたらかせているのはそちらだし…)
「時給を上げた」と恩着せがましく言っても、扶養を外れるような稼働のシフトを作られては本末転倒だ。

