止まらない違和感
「ちょっと……」
私は慌てて近づく。
そのときだった。
「やめて!」
蒼が駆け寄った。
自分の家のものが壊されたのが分かったのだろう。小さな手でマットを押さえる。
すると──
「うるさい!」
蓮くんが、蒼の手を強く払った。
「いたっ」
蒼が尻もちをつく。私は思わず駆け寄った。
「蒼、大丈夫?」
「うぅ……」
蒼は目を潤ませている。胸がぎゅっと痛くなった。
振り向くと、蓮くんは平然と立っていた。
そして
「蓮、ダメじゃん」
香織が言った。
でもその声は──
まるで軽い注意のようだった。
「小さい子には優しくしないと」
そう言いながら、特に怒る様子もない。
蓮くんも、悪びれた様子はなかった。
「はーい」
気のない返事。それだけだった。
私は言葉を飲み込む。
(今の……)
蒼はまだ3歳だ。
5歳の蓮くんに突き飛ばされたら、危ない。
それに、キッチンマットだって破れてしまった。
でも──
「まあまあ」
香織は笑って言う。
「子どもなんて、こんなもんでしょ?」
まるで、何事もなかったかのように。
私は蒼を抱き上げながら、小さくうなずくしかなかった。
「……そうだね」
でも、胸の奥にモヤモヤが残る。
(本当に……?)
私は、破れたキッチンマットを見つめた。
そして、楽しそうにリビングを走り回る蓮くんと、それを特に気にしていない姉の姿を見ながら、言葉にできない違和感が静かに広がっていった。
あとがき:「違和感」は見過ごしていいもの?
何気ない出来事の中で感じた、小さな違和感。
それは決して大きな問題ではないように見えて、心の奥に静かに残り続けるものです。
今回の結衣のように、「自分が気にしすぎなのかもしれない」と飲み込んでしまう場面は、誰にでもあるのではないでしょうか。
しかし、その違和感はやがて、人間関係のズレとして表面化していきます。
この出来事が、結衣と姉の関係にどのような影響を与えていくのか──ぜひ続きもご覧ください。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
記事作成: tenkyu_writing
(配信元: ママリ)

