夫の決意と新たな不安
その夜。
夕飯のあと、私は恒一に今日の出来事を話した。
PTAのこと。陰口のこと。そして、悠真の話。
話し終える頃には、胸の奥が重くなっていた。
「……ごめん」
思わず、そんな言葉が出る。
「私の断り方で怒らせたのかもしれない」
恒一は静かに聞いていた。
そして、ゆっくり口を開く。
「真帆」
「うん」
「それ、真帆のせいじゃないよ」
きっぱりと言った。
「でも」
恒一は少しだけ眉をひそめた。
「子どもにまで影響させるのは、さすがに良くない」
その声は、いつもより少し低かった。
私は驚いて顔を上げる。
恒一は穏やかな人だ。怒ったところを、ほとんど見たことがない。
でも今は、はっきりと不快そうな表情をしている。
正直、私も親同士の問題を子に波及させる藤川さんの行動は許せない。
「ちょっと、僕が話すよ」
「え?」
「そのママ友」
私は戸惑った。
「でも…」
「大丈夫、もうすぐ運動会だろ?そこで顔合わせるはずだから」
そして、ゆっくり続けた。
「僕も当事者だし、子どもの友達の親なんだから穏やかにやるから」
その言葉を聞いて、私は少しだけ胸が軽くなった。
でも同時に、別の不安も浮かぶ。
──本当に、話して大丈夫なんだろうか。
そう思いながら、私は小さくうなずいた。
あとがき:“断ること”の代償と、その歪み
正しい判断をしたはずなのに、その結果として人間関係が崩れていく──そんな理不尽さを描いた回です。本来、大人同士で完結すべき問題が、子どもにまで影響してしまう構図は、強いストレスと共感を与えます。一方で、恒一の「子どもに影響させるのは良くない」という言葉が、物語の倫理的な軸を示しています。次回、当事者同士の対話がどのような結果をもたらすのか、見どころです。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
記事作成: tenkyu_writing
(配信元: ママリ)

