約束の日、尚子親子がやってきました。
「お邪魔しまーす!ほら、駆、挨拶は?」
「……うわ、この家、おもちゃ少なっ!」
挨拶もそこそこに、駆くんは持参した大きな機関車のおもちゃを振り回しながらリビングへ突進していきました。
「あはは、ごめんね。この子、元気すぎて。ねえ美智、最近仕事どう? 私はさ……」
尚子はソファに座るなり、自分の近況をマシンガントークで話し始めました。私はお茶を出しながら、チラリと子どもたちに目をやります。駆くんはソファの上で飛び跳ね、娘たちはそれを少し怖がって部屋の隅に固まっていました。
「駆くん、テレビの近くだとちょっと危ないかも ……」
「大丈夫だって! ほら、子どもは元気が一番でしょ? それより聞いてよ、前の職場の上司がさ……」
尚子はスマホを取り出し、画面を見せながら愚痴を続けます。彼女の視線は手元の画面に釘付け。その時でした。
「いっけえええええ! 必殺、アイアン・スマッシュ!!」
駆くんの叫び声と共に、鈍い音がリビングに響き渡りました。
「ガンッ――バキッ!!」
「え……?」
視線を向けると、大型テレビの液晶に、駆くんが振り回していた金属製の機関車がぶつかっていました。
画面いっぱいに、クモの巣のような亀裂が広がっています。
次の瞬間、ぐらりと本体が傾き、台座から外れてテレビが床へ倒れました。
「あ……」
呆然と立ち尽くす私。隣でスマホを見ていた尚子が、ようやく顔を上げました。
鈍い音を立てて壊れてしまったテレビ…
とても衝撃的な光景ですね…。家にあがるなり、おもちゃを振り回して暴れた友人の息子と、子どもそっちのけで自分の話に夢中な母。
美智が恐れていたことが起きてしまったのです…。
壊した親が放った「衝撃の一言」
静まり返ったリビングに、えまの泣き声が響きました。突然の大きな音と、無残に壊れたテレビに驚いたのでしょう。
「……あーあ、壊れちゃった。これ、高いやつ?」
尚子が最初に口にしたのは、心配でも謝罪でもなく、値踏みするような一言でした。
私は震える手でテレビに駆け寄ります。電源ボタンを押しても、赤いランプが虚しく点滅するだけ……。
画面は完全に沈黙していました。
「駆! ダメでしょ、暴れちゃ。ほら、美智に『ごめんね』は?」
「ごめんねー」
駆くんは全く反省した様子もなく、また別の場所でおもちゃを振り回し始めました。
尚子は私の方を向き、申し訳なさそうに眉を下げて言いました。
「本当にごめんね、美智。でもさ……」
続いた言葉に、私は耳を疑いました。
「正直、小さい子がいる家でテレビをそのまま置いておくのも危ないよね?対策してないのも、お互い様っていうか……。うちは保護パネル貼ってるし、壁掛けにしてるよ? こういう事故って、いつか起きるものだしさ!」
謝罪はしたものの、「対策してないのが悪い」と言い放った尚子…。このあと、尚子親子は壊れたテレビをそのままにし、そそくさと帰って行ったのです。

