●弁護側のデメリットは?
デメリット1:弁護側も「手の内」を見せなければならない
公判前整理手続は、検察の手の内だけを一方的に見られる手続きではありません。弁護側も、「公判でこういう主張をする予定です」ということを裁判所と検察官に事前に明示する義務を負います(同法316条の17第1項)。
とくに、手持ち証拠の開示を十分に受けるためには、弁護側がまず自分の主張を示す必要があります。
「主張関連証拠」(弁護側の主張に関連する、検察官が持っている証拠)の開示請求は、弁護側が予定主張を明示した後にしかできないしくみだからです。
デメリット2:手続き終了後は証拠の追加が制限される
公判前整理手続きの終了後は、原則として新たな証拠の追加が制限されます(同法316条の32第1項)。
この制限は、弁護側の反証を見た検察官が後から証拠を追加する「後出し」を封じる効果もありますが、反面、弁護側から新たな証拠を追加することも制限されます。
今回の田久保氏側の動きについて、「卒業証書を出さなくて済むようにするため」という見方もありますが、この制限は弁護側にも等しくかかります。
たとえば弁護側が、以下のような事情で、後になってから私文書偽造罪や行使罪が成立しないと主張しようとしても、手続き中に出していなければ提出が制限されることになります。
1)真正な卒業証書を持っていたり、どこからどう見ても真正な卒業証書を持っていて、田久保氏側に偽造文書であることの認識がなかったという主張をしようとする場合
2)当該「文書」に東洋大学名義の押印がない(「有印」私文書偽造ではないこととなる)
3)当該「文書」が、およそ私文書偽造における「文書」といえないようなものである(例、その文書には「おいしいカレーの作り方」しか書いていなかった)
出さないまま手続きが終われば、後から証拠として提出するチャンスも自ら失うことになります。「出さないため」というより、検察の証拠構造を把握した上で戦略を練る段階にあるとみるのが自然でしょう。
監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)

