オカタオカ 個展「TOBAN TOBAN」
ドローイングが「陶板」になるとき生まれる、偶然性と奥行き
陶板作品
本展は、瀬戸の陶磁器工芸メーカー・中外陶園との協働によって実現したもの。オカタオカがこれまで描いてきた動物や自然のモチーフが、今回初めて陶板というかたちで立ち上がる。
注目したいのは、イラストレーションがそのまま焼きものへ置き換えられているのではなく、やきもの特有の不確定性を引き受けたうえで、新たな表現へと更新されている点だ。焼成を経ることで生まれる微細なムラやにじみ、鉄分を含む絵具やマット釉による質感の揺らぎは、平面的な図像にとどまらない奥行きを作品にもたらしている。
「焼いてみるまでわからない」という陶芸ならではのプロセスは、完成像をコントロールしきれないからこそ、線や色に予想外の豊かさを宿らせる。オカタオカの持ち味である自由なドローイングが、陶板という素材の中でどのように変化し、どのような空気をまとって現れるのか。本展は、その変化の瞬間を目撃する機会になりそうだ。
“冬の番”から春へ。曖昧な季節感をとどめた31点

展示では、15cm角の陶板作品31点を発表。反復される陶板の配置によって、ひとつひとつのイメージが壁面から空間へと広がっていく構成も見どころのひとつだ。
作品制作が行われたのは、寒さの厳しい1月末の瀬戸。鹿児島在住のオカタオカにとって、その冷え込みは印象的な体験だったという。アーティストは、無意識に“暖”を求めた結果、春や夏を思わせるあたたかな情景が多く立ち上がったと語っている。
展覧会タイトル「TOBAN TOBAN」は、「陶板」をもとにしながら、“冬の番”のような響きも重ねたものだという。冬から春へ移る直前の、まだ名前の定まらない曖昧な時間。その気配が、今回の陶板作品には静かに封じ込められている。単なる素材の転換にとどまらず、季節感や身体感覚までも作品に取り込んでいる点に、本展の魅力がある。

