乳がん治療を終え、ほっと一息ついたのも束の間、「以前より疲れやすくなった」「体重や脂肪が増えてしまった」「すっかり筋力が落ちてしまった」といった悩みに直面する方は少なくありません。そんな治療後の心身の変化をどうしよう、、と思っている方々へ、一冊が出ました。
2026年3月に金原出版から刊行された『乳がん治療後「疲れやすくなった・脂肪が増えた・筋肉が減った」を改善する本 奥松流おすすめトレーニング&レシピ』です。

著者は奥松功基さん。奥松功基先生は、東京・築地にあるメディカルパーソナルジム「リオールジム」の代表を務めるスポーツ医学博士です。
きっかけは大切な家族の闘病
以前取材もさせていただいたことがあります。
奥松先生が乳がんに関する運動と食事の研究を始めた直接のきっかけは、2015年にご自身のお母様が「ステージ3の乳がん」と診断されたことでした。
当時、お母様が手術を受けた際、主治医であった山内英子先生(現・ハワイ大学がんセンター教授)から「術後は適度に運動するように」というアドバイスを受けました。奥松先生は、この時初めて乳がん経験者に運動が良い影響を与えるという事実を知ったそうです。
偶然にも、奥松先生は、当時すでに筑波大学で肥満の方を対象とした運動や食事の研究を行っており、その話を山内先生にしたところ意気投合し、共同研究がスタートすることになりました。
お母様はもともと体育教師で、日頃から運動や食事には気を配られていました。運動をしていても乳がんを完全に予防できるわけではありませんが、日頃の運動によって「体力が高かったこと」が幸いし、過酷な治療を無事に乗り切ることができました。
現在でも、陸上のコーチとしてパラリンピックに出場するほどご活躍されています。
「大切な家族の闘病」とご自身の「スポーツ医学の研究」が、主治医との出会いを通じて結びついたことが、現在の奥松先生の熱心なサポートの原点となっているのです。そして、研究だけでなく、研究と現場の橋渡し役を買って出て、運動と食事がもたらす利点を本で書かれています。
安静にするだけではなく、運動してもいい?
乳がんを経験された方が、過度に安静にするだけでなく「運動しても良い(むしろ推奨される)」場面。これには医学的な根拠があります。
乳がん診断後や、治療中から治療後にかけて、運動はできる範囲で習慣化することが推奨されています。
その背景には、本書を参考にしていただきたいのですが、運動腫瘍学(エクササイズ・オンコロジー)における分野トップの学術論文など、確かな最新研究の裏付けが重ねられてます。
治療中の運動習慣は、乳がんの再発リスクを低下させる効果があると言われていますし、 治療で落ちてしまった体力も、運動を続けることで着実に回復することが示されています。
単なる気分転換にとどまらず、「治療後の予後を改善し、再発や合併症のリスクを下げる」という明確なメリットがあるため、適度な運動を取り入れることが進められているのです。

