2時間前にログインしていた夫
私の心臓が、ドクンと嫌な音を立てた。アイコンの横に表示されたステータス。 【ログイン:2時間前】
「え……?」
指先が冷たくなる。2時間前?その時、彼は「残業で遅くなる」とLINEをくれていたはずだ。
画面を凝視する。彼のプロフィール写真は、私と付き合っていたころのままだ。けれど、自己紹介文が微妙に更新されている。『仕事が忙しくて癒やしを求めています。まずはメッセージから』
「癒やし……? 私がいるじゃない」
声が震えた。同時に、玄関の鍵が開く音がした。
「ただいまー。ごめん、遅くなった!」
リビングに入ってきた亮平は、いつもの優しい笑顔だった。その笑顔の裏で、ついさっきまで見知らぬ誰かを探していたのかと思うと、吐き気がした。
「おかえり……お疲れ様。今日、忙しかった?」
「ああ、課長に急な資料作成頼まれちゃってさ。参ったよ」
彼は鞄を置き、真っ先に手を洗いに行く。その背中を見つめながら、私はスマートフォンの画面をそっと閉じた。
あとがき:幸せという名の「薄氷」
愛する人の背中が、一瞬で「得体の知れない他人」に変わる恐怖。マッチングアプリという、かつて二人を結んだ「運命の場所」が、今度は最悪の裏切りの舞台になる皮肉が効いていますね。亮平の「ただいま」という優しい声が、スマホの画面一つでこれほどまでに不気味に響く。平穏な日常が崩れる音は、意外にも静かで、そして冷酷なものだと思い知らされる導入です。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
記事作成: ゆずプー
(配信元: ママリ)

