アプリの件を遠回しに尋ねるも、亮平は曖昧な返事で逃げる。確信を得たりかこは、親友・静香の協力で偽のアカウント「まどか」を作成。夫の理想を詰め込んだ罠を仕掛けると、わずか15分で彼から反応が届く。
アプリの退会についてそれとなく話題に出す
翌日の夕食時。私は亮平の好物の肉じゃがを食卓に並べながら、努めて明るい声を出した。
「ねえ亮平。昨日、スマホの整理してたらさ、昔使ってたマッチングアプリが出てきたんだよね。退会しようと思ったんだけど、パスワード忘れてて手こずっちゃって。亮平はもう消した?」
亮平の箸が、一瞬止まった。
「え……? ああ、アプリか。懐かしいな。俺も……確か、だいぶ前に消したと思うけど。どうだったかな」
「あれって意外と退会の仕方が難しいよね。設定の奥の方にあるし」
私は彼の目を見つめた。亮平は視線を泳がせ、味噌汁をズズッと啜った。
「そうそう、結構分かりにくいんだよな。俺も苦労した記憶があるよ。……まあ、もう使わないんだし、どうでもいいじゃない」
「そうだよね。でも、ログインしたまま放置するのもセキュリティ的に良くないかなって思って」
「はは、りかこは真面目だね。俺も今度確認しておくよ」
夫の隠れた悪事を確信
濁した。完全に濁した。もし本当に使っていないなら、「え、まだ残ってたの? 俺も確認してみるわ」と目の前で開くはずだ。ログイン2時間前だった男が、あんなに曖昧な返事をするなんて。
私は確信した。彼は今、この瞬間も、私に隠れて「癒やし」を探している。
「……亮平、何かデザート食べる?」
「あ、アイスある? もらおうかな」
無邪気に喜ぶ彼の顔が、急に他人のように見えた。

