アプリ内で「独身の一人暮らし」と嘘を吐き、まどかを口説く亮平。隣でポテトチップスを食べる夫が、画面越しに別人として甘い言葉を吐く。憤りを抱えながら、りかこは彼を誘い出し、ついに密会の約束を取り付ける。
マッチングした夫とのやり取り
マッチングした直後、リョウからメッセージが届いた。
『はじめまして! まどかさん、雰囲気すごく素敵ですね。僕も年下の元気な子と話したかったんです』
スマホを見つめる私の口元が、歪んだ。 (「年下の元気な子」ですって? 私には「落ち着いた大人の女性が好き」って言ってたじゃない)
私は静香と作戦を練りながら、返信を打つ。
「まどか:はじめまして! うれしいです。リョウさん、お写真から優しそうなオーラが出てて気になっちゃいました」 「リョウ:よく言われます(笑)。仕事は広告系で、今はちょっと刺激が欲しくて。まどかさんは、どんな出会いを求めてるんですか?」
隣で「独身で一人暮らし」だと嘘をつく夫
仕事が広告系? 嘘。彼はただの公務員だ。見栄まで張っている。私は怒りを通り越して、なんだか滑稽に思えてきた。私は彼が喜ぶツボを完璧に突いていった。
趣味の話、好きな食べ物の話、休日の過ごし方。
「まどか:実は私、ちょっとワケありの恋愛にも興味があって……リョウさんは独身ですよね?」
心臓がバクバクする。
「リョウ:もちろんです。今は一人暮らしで、ちょっと寂しいなと思ってるところで」
……一人暮らし? 今、私の隣のソファでテレビを観ながらポテトチップスを食べている男が、スマホの中で「一人暮らしの寂しい男」を演じている。
「ねえ、亮平。何笑ってるの?」
私はスマホを置き、彼に声をかけた。
「え? ああ、ショート動画が面白くてさ」
彼は画面を隠すようにして笑った。その画面に映っているのは、動画ではなく私(まどか)とのトーク画面であることを、私は知っている。

