「ビニ傘なら返さなくていい」という価値観のズレ
ところが、私の言葉を聞いた佳代は、悪びれる様子もなくこう言ったのです。
「んー、まあ、ビニ傘だしねぇ」
その一言に、私は言葉を失いました。彼女にとってビニール傘は、コンビニで手軽に買える「使い捨て」のような感覚だったのでしょう。借りたものを返すという最低限のマナーよりも、「ビニ傘程度で細かいことを言う方がおかしい」という空気が流れた気がしました。
結局、彼女はしばらく雨宿りをしてから、止み間を狙って帰っていきましたが、見送った後の私の心は、外の天気以上にどんよりと曇っていました。
自分にとっての「当たり前」を見直してみたけれど
その夜、帰宅した夫に一連のできごとを話しました。
「ビニール傘って、返さないのが一般的?大して高くない傘だし、私が細かすぎるのかな」
私の問いかけに、夫は少し考えてから答えました。
「ん~金額の問題じゃないと思うよ。たとえ安価なものでも、困っているときに助けてもらったことを、次に会うまでちゃんと覚えていられるかってところじゃない?」
確かに、3ヶ月に一度しか会わないような間柄だと、ビニール傘を借りたこと自体忘れてしまうこともあるかもしれません。私自身も、絶対に忘れない自信があるかと聞かれれば、不安になることもあります。
でも、相手の傘が減ってしまうことで困るかもしれないと想像することはできるはず。
自分と相手にとっての当たり前は違うと理解した私は、傘を貸すことを辞めようと思いました。それは親切心ではなく、なあなあな関係を許してしまう隙を作っていたのかもしれません。
次に雨が降ったときは、「すぐ近くのコンビニで安く買えるよ」と伝えればいい。もし家に予備の傘があって貸そうと思う状況なら、返ってこなくてもいいと思って貸すことにします。そうすれば、あとでこうしてモヤモヤすることもないですからね。
1本の傘を通して見えたのは、物の価値ではなく、人との距離感の保ち方と、価値観の違いの受け止め方でした。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
記事作成: hattiki0421
(配信元: ママリ)

