決戦の水曜日。待ち合わせ場所でまどかを待つ亮平に、りかこは正体を隠したまま「あなたの正体を知っている」と引導を渡す。逃げるように帰路につく夫。りかこは静香と、彼が味わう絶望を冷ややかに見届ける。
ソワソワうれしそうに支度をする夫
約束の水曜日。亮平は朝からどこかソワソワしていた。
鏡の前で入念に髪をセットし、私が選んだのではない、少し高価そうなシャツを選んで着ていった。
「今日は仕事、遅くなりそう?」
「ああ、ちょっとプロジェクトの打ち合わせが長引きそうでさ。夕飯は適当に済ませてくるから、先に寝てていいよ」
「分かった。頑張ってね、亮平」
私は彼を笑顔で送り出した。その足で、私は静香の家へ向かった。
いざ、決行のとき
夜の19時。待ち合わせ場所は、隣駅のホテルの近くにあるカフェ。
亮平から「まどか」へメッセージが入る。
『今、着いたよ! 紺色のジャケットを着てる。楽しみにしてるね』
私たちはその画面を見ながら、コーヒーを飲んでいた。
「さて、第一弾いこうか」 私は「まどか」として返信した。
「まどか:ごめんなさい! 急に仕事が入っちゃって、少し遅れそうです。30分だけ待っててもらえますか?」
「リョウ:全然大丈夫! ゆっくり気をつけてきてね」
30分後、さらに30分。そしてさらに1時間。
亮平から届くメッセージは、次第に焦りを含んでいった。
『まどかさん、大丈夫? 何かあった?』
『もう2時間経つけど……連絡だけでもほしいな』
GPS(夫の同意済み共有アプリ)を確認すると、彼は律儀に待ち合わせ場所の周辺をうろうろしている。目に見えて落ち込んでいる姿が目に浮かぶ。

