●改正法で時効が延長、立件につながった
刑事事件では、2013年7月後半の遠征の際の被害と、2016年7月、8月の合宿時の被害の計3件が、準強姦の起訴内容となっている。
2023年の刑法改正により、公訴時効が延長された。改正時点で時効が成立していない過去の事件にも適用されるため、改正前であれば時効が成立していた2023年7月の被害についても、今回の起訴が可能になった。
女性は児童福祉法違反と強姦で刑事告訴していたが、逮捕容疑が児童福祉法違反だったこともあり、寺西弁護士は「強姦あるいは準強姦での起訴は難しいと思っていた」と振り返る。
当時の法制度では、女性は被害時に性的同意年齢を超えていたため、「暴行・脅迫」や「抗拒不能」といった要件が立ちはだかる。
さらに男は、女性が成人してからの性的行為については認めつつ「同意があった」と主張し、未成年時の行為については否認しているという。
DNAや映像などの客観的証拠があれば立証につながることもあるが、そうでない場合、10年以上前の加害行為を立証するハードルは高い。
今回のケースでは、女性が運動部の練習のためにつけていた日誌や、合宿時の宿泊名簿が残っており、被害の日時や場所を特定するうえで大きな手がかりになったという。
寺西弁護士は「継続的な性加害や家庭内性虐待の場合には、被害者が被害日時を覚えていないことも多い。解離のため証言自体できない人もいる」と指摘する。
そのうえで「今回のように時間が経ってからも客観的な証拠が見つかることもある。古い事案だからといって諦めてはいけないことが自分にとっても学びになった」と話した。
●「自分も怒っていいんだ」と思えた
女性は、友人に被害を打ち明けたときの反応が印象に残っているという。
「軽蔑されるのではないか、自分が悪かったのではないかと思っていました。だから、代わりに怒ってくれたことがすごく意外で『自分も怒っていいんだ』と思えました」
病院ではPTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断された。現在も精神科への通院を続けながら、少しずつ、自分を責める気持ちそのものが被害によるものだったと認識できるようになってきたという。

