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「どうして日本にいるの」と言われて──それでも人と向き合う弁護士に 韓泰英さんが選んだ道

「どうして日本にいるの」と言われて──それでも人と向き合う弁護士に 韓泰英さんが選んだ道

●刑事事件や人権に関わる仕事をしたい

弁護士登録後、入所した法律事務所で、1年目に裁判員裁判の事件に関わった。

その後も高齢者虐待のケースなどに取り組む中で、刑事事件や人権に関わる仕事をしたいという思いを強めた韓さんは、アムネスティ・インターナショナルの職員から弁護士に転じた岩井信さんの事務所に、2019年に移った。

「面識はなかったものの、『日の丸君が代訴訟』の原告代理人だった岩井さんが報告者をつとめた集会に参加したことがあったんです。

実務家でありながら理論的なことを考え、それを実践しようとする。そういう姿勢に惹かれ、頼み込んで入所しました」

シリアで武装組織に拘束されたジャーナリストの安田純平さんが、帰国後に旅券を発給しない国を相手に起こした訴訟でも、岩井さんは代理人をつとめた。

入所1年目だった韓さんもこの訴訟に関わった。裁判では、国による旅券発給拒否は違法だとする安田さんの主張が一審、二審判決で認められ、最高裁で確定している。

●誰もが生き直せる社会になってほしい

「大平光代さんの本が刺さったのは、自分も悩みを抱えていたからだと思います。人に関わりたいのも、しんどさを誰かに共有したかった当時の自分の気持ちが影響しているのかもしれません」

こう話す韓さんは、時間をかけて依頼者と向き合う。何度も当事者に会い、病院に同行して医師の話を聞き、ときに実家まで足を運んで作成する陳述書は、同じ弁護団のメンバーからも一目置かれている。

「外に足を運ぶことのない裁判官は、当事者についてごくわずかなことしか知りません。外国人とか被告人というバイアスによって、事実が見落とされたり、不利なほうへ解釈されることがないようにしたいと思っています。

もちろん、自分も人を色眼鏡で見てしまうことはありますし、それが人間でしょう。でも、私は誰もが生き直すことができる社会を望むし、そのためには知りうる限りのことを知って、できる限りのことはやりたいと思います」

相談者の多くは、自分の人格や権利が不当に侵害されたとき、弁護士のもとを訪れる。

「対話を通じて自分の問題と向き合い、公的な場で言語化することは、それ自体とても大事なことです。人と人とのやり取りには相互作用があるので、相談者と弁護士は互いに勇気づけられているとも思います」

相談者と一体化しすぎれば、見えなくなるものもある。プロとして、冷静な頭と温かい心で──そうありたいと思いながらも、相談者の問題を何とかできないかと、つい深くのめり込んでしまうタイプだと自覚しているという。

そんな韓さんに気分転換を尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「テニスやランニングができればと思うのですが、なかなか時間が取れなくて。息抜きは、事務所の近くにある銭湯に行くことです。顔なじみの銭湯のおばちゃんに煮物をもらったりするくらい、よく通っています(笑)」

【プロフィール】
はん・てよん/1988年東京生まれ。東京大学法学部、一橋大学法科大学院卒業。2016年弁護士登録。神田橋綜合法律事務所に所属。

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