練習後、スポ少チーム内の絶対女王・秋乃に呼び出された春子。「専業主婦」というだけで、ムチャな要求をする秋乃を前に春子は…。
女王からのお呼び出し
6年生の小学校卒業が近づくにつれ、チーム内は「代替わり」の話題で持ちきりになっていた。
「次期会長」に内定している秋乃さんの権力は、もはや絶対的なものとなり、彼女の周囲を固めるママたちのわらい声も、以前より一層、高くひびくようになっていた。
ある日の練習終了後、秋乃さんに指先で手招きされた。
「春子さん!大事な話があるから…こっちに来て」
声を聞いただけで、背筋にいやな汗が伝わる。つれて行かれたのは、バックネットのウラ。周囲にはだれもいない。
「あらためて確認するけど、あなた今は専業主婦よね?」
秋乃さんは冷笑をうかべ、胸の前でウデを組んだ。
「専業主婦」というだけで…
「来期から、5年生以下の遠征や練習試合の送迎、あなたが全員分担当して。私の車や他のママたちの車を使うのはなしね。自分で手配して、子どもたちをはこぶのよ」
思わず、耳をうたがう。
(全員分の送迎? 一学年だけで10人以上いるのに?)
「……え、私の車は軽自動車です。全員分を一人で…というのは、物理的に不可能です。ガソリン代や高速代だって…」
「専業主婦なんだから。時間はたっぷりあるでしょ? 何往復でもすればいいじゃない。他のママたちは共ばたらきで、週末だって家事や仕事でいそがしいのよ。社会に貢献していないあなたが、チームのために汗をかくのは当然の義務じゃないの?」
「専業主婦」へのあきらかな蔑視。私は奥歯をかみしめた。
「それは…送迎は協力し合うのが原則のはずですよね……」
秋乃さんは一歩近づき、私の顔をのぞき込みました。

