「居場所が見つからない」という、大人にも共通するテーマ
――本作を描く上で取材などもされたと思います。実際に見聞きしたエピソードやセリフなどは描かれているのでしょうか。
とーやあきこさん:学校へ行けなくなってしまった経験のある方やその保護者の方をはじめ、講演会や保護者の集まりなどで、さまざまな方にお話を聞かせていただきました。作中にはその内容を散りばめていますが、基本的に少し変えています。全く変えていないのは、母の千紗が不登校を考える保護者の交流会に参加したときに、「何年も何も変わらない」と呟いた保護者のセリフです。実際に集まりに参加した際にどこからか聞こえてきた言葉で、あらためて不登校問題の難しさを思い知らされました。


――本作を描くうえで心がけたこと、気をつけたことはありますか?
とーやあきこさん:学校へ行かないことで起こってしまういくつもの問題や悩みを「出来事の繋がり」として描かず、「心の揺れ動き」で繋がっていくように心がけました。また、不登校というテーマではあるものの、「居場所が見つからない」という、大人にも共通するテーマでもあるということを忘れずにいました。たとえば、作中に出てくる真奈の「なにかを頑張らなきゃ生きてちゃいけないってこと?」というセリフは、子どもだけではなく大人にも共通する悩みではないかと思います。


――読者からは、どのような反響がありましたか?
とーやあきこさん:「苦しくて途中で読むのをやめようかと思った」というお言葉と、「真奈をそっと見つめる女の子・沖名さんの存在に助けられた」というお言葉を多くいただいた気がします。また、教師という立場の方から「どうやったら子どもたちを助けられるのかあらためて考えていこうと思った。そして、今まで助けられなかった子どもたちを思い出し申し訳なくなった」というお言葉もあり…。たくさんの子どもたちのことを大切に考えてくださっている先生にそんな思いをさせてしまい、こちらが申し訳なく感じたこともありました。
* * *
とーやあきこさんが、多くの人への取材を通じて描いた本作。不登校に悩む親子や、周りの人々の苦悩を少しでも理解し、作品に反映しようと丁寧に描かれていることがわかる作品です。リアルな心理描写に、感情が揺さぶられます。
取材・文=松田支信

