ついに完成した《ローヌ川の星月夜》
フィンセント・ファン・ゴッホ《ローヌ川の星月夜》, Public domain, via Wikimedia Commons.
ヴィレミーナに上述の手紙を送ってから1ヶ月も経たないうちに、ファン・ゴッホは《ローヌ川の星月夜》を描き上げました。
夜の色彩の豊かさについて語っていたのに、最終的には青と黄色の2色でまとまっているのも見逃せない展開(褪色の可能性は否定できませんが)。ですが、それぞれの星の光に強弱があったり、星の光とガス灯のオレンジがかった光の違いが描き分けられていたり、よく見ると豊富な色味が見えてきます。
フィンセント・ファン・ゴッホ《ローヌ川の星月夜》(部分), Public domain, via Wikimedia Commons.
星が実景よりも大きいのは、主題が星であることに加え、体感の大きさを反映しているのかもしれません。星空を見つめているときの、星が大きくまぶしく感じられる感覚を描きたかったのでは……なんて思います。
かねてより描きたかった星空を最高の形で完成させたファン・ゴッホ。ひとつの頂点といえる絵画です……が、このあと、彼の芸術はもうひとつの大きな変化を迎えます。果たしてそれは喜ばしいのかどうなのか…。
耳切り事件と心の内を描いた《星月夜》
ポール・ゴーギャン《ひまわりを描くゴッホ》, Public domain, via Wikimedia Commons.
ファン・ゴッホはアルルで画家のゴーギャンと共同生活を送っていましたが、徐々に関係が悪化。2人は仲違いし、1888年12月末にファン・ゴッホが自身の耳の一部を切り落とす「耳切り事件」が起きてしまいました。
病院への入退院を繰り返したあと、彼はアルル近郊のサン=レミにある療養所に入所。発作に苦しみながらも絵を描き続けました。
フィンセント・ファン・ゴッホ《星月夜》, Public domain, via Wikimedia Commons.
《星月夜》はサン=レミ時代を代表する作品。空の渦巻きや近景のくにゃくにゃした糸杉が特徴で、これまたファン・ゴッホの傑作とされています。ですが、なんだか不穏な印象を抱きはしないでしょうか?
本作は療養所の窓から見た風景をベースに、彼が想像や脚色を加えた作品です。画家の不安定な精神をそのまま映したようで、ファン・ゴッホの心の叫びが痛みとともに伝わっています。
フィンセント・ファン・ゴッホ《星月夜》(部分), Public domain, via Wikimedia Commons.
《ローヌ川の星月夜》では現実を描いていたのに対し、《星月夜》では風景とともに心情まで描き出せるようになったファン・ゴッホ。ほかの題材でもオンリーワンの描き方で内面を表すことに成功し、自分の芸術を確立しました。
彼が巨匠と称えられるのはそのためですが、絵画のために心と魂を削り出すようなもの。このスタンスで制作を続けるのは、しんどかっただろうと思うのです…。
