太もも裏のしこりを1年間放置し、子どもの付き添い時の受診で「悪性軟部肉腫(筋肉や脂肪などの軟部組織のがん)」と診断されたごんたさん(仮称)。脚の切断の可能性に怯え、家族の生活や金銭面に不安を抱きながらも、広範切除手術と抗がん剤治療を乗り越えました。「もっと早く受診していれば」と後悔しつつも、病気を経て身近な人を大切に思い、自分を優しく見つめ直せるようになった心の変化と、職場復帰への軌跡を紹介します。
※2025年3月取材。
体験者プロフィール:
ごんたさん(仮称)
40代、都内勤務の会社員。2024年に軟部肉腫と診断を受ける。広範切除手術後、3カ月の抗がん剤治療を受け現在は経過観察中(取材時)。転移の不安は抱えつつも、生活自体は以前と変わらぬ日常を取り戻している。
病院から「早めに来院できますか?」
編集部
最初に不調や違和感に気づいたのはいつですか?
ごんたさん
受診する1年ほど前から太ももの裏にやや大きなしこりがあることに気づいていたものの、痛みなどがなかったため、特に気にすることなく放置していました。マッサージに行った際、施術者からも指摘を受けたものの、「そうなんですよね」と空返事するだけでした。
編集部
受診から診断にいたるまでの経緯を教えてください。
ごんたさん
子どもの付き添いで地元の整形外科を訪れた際、ついでに自分の太もものしこりについても診てもらいました。診察後、脂肪腫の疑いで、すぐに総合病院でのMRI検査を受けることになりました。担当医の少し深刻な表情が印象的に残っています。検査は急ぎだったものの予定が合わず、1週間後にMRIを受けました。数日たって地元の整形外科から連絡があり、「たった今、結果が届きました。早めに来院できますか?」と聞かれ、嫌な予感とともに受診したところ、軟部肉腫(筋肉や脂肪などの軟部組織に発生する悪性腫瘍)の可能性があることを伝えられました。
編集部
その後、大学病院に行ったのですか?
ごんたさん
そうです。大学病院で生検をした結果、悪性軟部肉腫であることが確定し、「広範切除手術が必要」との説明を受けました。 腫瘍のグレード(悪性度)は1または2のため、現時点では化学療法は行わない方針とのことでした。さらに「手術してみて、広範囲に進行していた場合は脚の切断が必要になる可能性がある」と告げられました。
自分のことより家族と金銭面に不安
編集部
そのときの心境について教えてください。
ごんたさん
最初に心配になったのは仕事と収入、そして家族のことでした。自分の身体より、加入していた保険の内容が気になって仕方ありませんでした。治療が半年近くかかり、入退院の繰り返しになると聞いたので、今後の家族の金銭面の心配が先でしたね(笑)。病気については、徐々に実感してきた感じです。ある程度の覚悟はしていたものの、いきなり決まった2週間ほどの入院と手術、そして「もしかしたら四肢の一部を失うかもしれない」という現実を受け入れるのには時間がかかり、眠れない日もありました。幸いにも、勤務先が全面的にサポートしてくれたことで、治療に専念することができました。本当にありがたく感じました。
編集部
実際の治療はどのように進められましたか?
ごんたさん
広範切除手術が行われました。目視で腫瘍は大腿二頭筋長頭(太もも裏の筋肉の一部)にとどまっていたそうで、脚切断の必要はありませんでした。 しかし、腫瘍の進行度がステージ3Bと診断され、化学療法が追加されました。ドキソルビシン/イホスファミド療法(AI療法)を3クール(約3カ月間)行いました。
編集部
受診から現在まで、印象に残っているエピソードはありますか?
ごんたさん
思っていたよりも、治療が淡々と進んだのが印象的でした。もちろん抗がん剤の副作用はあり、投与中の倦怠感や止まらないしゃっくり、また免疫の低下による体力の低下、全身の脱毛など一通りの苦労は経験しました。しかし、自分の中では終わってみれば「この程度か」という感じでした。もちろん個人差はあると思いますが、想像していた「抗がん剤治療=すごくつらい」というイメージに比べると、実際は重々しさも少なく、少し拍子抜けしたような感覚さえありました。職場の仲間たちは、こちらが申し訳なくなるくらい心配してくれましたが、病院のスタッフはあくまで冷静に対応しているようにも見えました。患者を必要以上に不安にさせない配慮だったのかもしれません。
編集部
病気の前後で変化したことはありますか?
ごんたさん
手術と治療を終えて半年が経った現在は、手術による若干の脚の不自由を除けば、以前とほとんど変わらない日常が戻ってきています。

