脳出血の好発部位
脳出血と一言でいっても、出血する場所によって症状や重症度、予後はまったく異なります。ここでは、脳出血が起こりやすい5つの部位(好発部位)ごとの特徴を解説します。
小脳
小脳(しょうのう)は、身体のバランスや運動の調節を司る部位です。脳出血全体の約10%が小脳出血といわれています。
主な症状は、突然の激しいめまい、嘔吐、後頭部の頭痛、立っていられないほどのふらつき(歩行障害)です。出血量が増えて血腫が大きくなると、前方にある脳幹が圧迫されて急激に意識障害が進行します。
視床
視床(ししょう)は、手足から送られてくる感覚情報を大脳へ中継する役割を担っています。特徴的な症状は、出血した側とは反対側の手足のしびれや感覚鈍麻です。運動麻痺よりも感覚障害が強く残ることが多く、発症後に視床痛と呼ばれる激しい痛みに長期間悩まされることがあります。
視床の内側に出血が及ぶと、脳室内に血液が入り込み脳室穿破(のうしつせんぱ)を起こしやすくなります。こうなると水頭症を併発し、意識障害が重篤化しやすいそうです。
被殻
被殻(ひかく)は全体の約40〜50%を占める好発部位です。身体の運動機能を調節する役割を持っています。
主な症状は、出血した反対側の手足の運動麻痺と感覚障害です。出血が左側の脳(優位半球)で起こった場合は、言葉が話せなくなったり理解できなくなったりする失語症を伴うことが多いそうです。
右側の脳で起こった場合は、空間の半分を認識できなくなる半側空間無視などの高次脳機能障害が現れることがあります。
皮質下
皮質下(ひしつか)出血は、大脳の表面に近い白質で起こる出血です。脳出血全体の約10%を占めます。高齢の方では脳アミロイド血管症、若い方では脳動静脈奇形(AVM)などが原因となるケースが多いそうです。
ほかの部位の出血に比べてけいれん発作(てんかん)を伴いやすいのが特徴です。意識障害は軽度で済むことが多いそうですが、出血範囲が広い場合や基礎疾患(動脈瘤など)がある場合は注意が必要といえるでしょう。
脳幹
脳幹(のうかん)、特に橋(きょう)と呼ばれる部位での出血は、脳出血の中で生命の危険が高いタイプです。脳幹は呼吸や心拍、血圧調整、意識の維持など、生命活動の根幹を司る場所だからです。
脳幹出血を発症すると、発症直後から深い意識障害に陥ることが多く、呼吸障害や四肢麻痺(両手足が動かない)、縮瞳(瞳孔が小さくなる)が見られます。予後は極めて不良です。外科的な血腫除去が困難であり、治療は薬物療法による保存的治療に限られます。
脳出血の治療法
脳出血の治療は時間との勝負であり、患者さんの状態に合わせて適切な方法が選択されます。主な3つの治療アプローチについて解説します。
手術
脳出血の手術は、主に血腫を取り除いて脳への圧迫を減らし、救命や症状の悪化を防ぐ目的で行われます。
すべての患者さんに手術が行われるわけではなく、出血部位、血腫の量、意識レベルなどを総合的に判断して決定されます。代表的な手術法は以下の3つです。
・開頭血腫除去術
・内視鏡下血腫除去術
・定位的血腫吸引術
また、脳室内に出血が及んで水頭症を起こしている場合は、脳室ドレナージという管を入れて髄液と血液を排出する処置が行われます。
薬物治療
脳出血のすべての患者さんに行われる治療法です。まずは、降圧薬(カルシウム拮抗薬や硝酸薬など)を点滴で投与し、血圧をコントロールします。次に、抗脳浮腫薬(こうのうふしゅやく)です。
脳のむくみ(浮腫)を軽減させて脳圧を下げることで、脳細胞の障害を抑えます。そのほか、止血剤、胃薬、抗けいれん薬などが患者さんの状態に合わせて適切に投与されます。
リハビリテーション
急性期では、廃用症候群を防ぐために、早期に座る練習や立つ練習を行います。回復期(発症後数ヶ月)では、機能回復を目指すため、歩行訓練、日常生活動作(着替え、食事など)の訓練、発語や嚥下の訓練が集中的に行われます。
生活期(維持期)では、自宅や施設で獲得した機能を維持するためのリハビリテーションが中心です。早期から継続的にリハビリテーションを行うことが、後遺症の軽減と機能回復の鍵です。

