●遺体なし・有罪になった事例はある
遺体が見つからないまま殺人罪で有罪となった事例は存在します。
たとえば千葉地裁の裁判例(令和4年3月8日)では、別居中の妻を殺害したとして夫が起訴された事案で、懲役21年の有罪判決が下されました。
この事件では、以下のような事情から有罪判決が下されています。
・犯行に使われた車から致死量に達する大量の血痕が発見されたこと
・被告人の自宅から、行方不明になった妻の所持品や、妻の血痕が付着したゴム手袋・折り畳みナイフが見つかったこと
・被告人が、捜査側がそれまで把握していなかった「犯行に使った車はプリウスではない」という事実を自ら供述したこと(これが「秘密の暴露」と呼ばれ、本当に犯人でなければ知り得ないことを語ったとして自白の信用性を強く裏付けるものとされました)
・犯行後、被告人が救急通報などをせず、かえって妻の失踪を子どもの監護者指定の裁判で自分に有利に使おうとしたという不自然な行動
●今回のケースでは?
今回のケースでは、先にも述べたように、この男性が、妻を焼却炉に遺棄したと供述しており、捜査によって人の体の一部のようなものが見つかったということです。
まず重要なのは、この人体の一部が被害者のものであると判明するかどうかです。 仮に被害者のご遺体の一部であることが確認できれば、客観証拠として非常に有力なものといえるでしょう。
もちろん、先に述べたように、被害者のものだと判明しても、どのような部分が発見されたのかによって、死因や殺害方法、故意などの立証に未だハードルが残ります。
しかし、「誰も知らない死体遺棄の話を男性がしていて、その話のとおりの客観的証拠が出てきた」(秘密の暴露)のですから、供述の信用性も高いと評価されるでしょう。
仮に焼却炉から何も見つからなかった場合、千葉の事件と比べると、その他の場所からの痕跡も未だ見つかっていない現状からすると、立証のハードルがかなり高いと考えられます。 殺人罪での起訴に至らず、死体遺棄罪などより証明しやすい罪で起訴されるにとどまったり、場合によっては不起訴となる可能性もあります。
現時点では、発見内容などに未知の部分が多いため、今後の捜査の進展が注目されます。
監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)

