日本セルヴィエは、IDH1またはIDH2遺伝子変異陽性の神経膠腫 (しんけいこうしゅ) に対する国内初の分子標的薬ボラニゴ®錠10mg (一般名:ボラシデニブ)を2026年3月30日に発売したと発表しました。神経膠腫とはどのような病気であり、同剤の登場で神経膠腫の治療はどう変化するのでしょうか。 勝木先生に聞きました。
※2026年4月取材。

監修医師:
勝木 将人(医師)
2016年東北大学卒業 / 現在は諏訪日赤に脳外科医、頭痛外来で勤務。 / 専門は頭痛、データサイエンス、AI.
発表の内容について
編集部
日本セルヴィエが発表した内容を教えてください。
勝木先生
日本セルヴィエは2026年3月30日、「ボラニゴ®錠10mg」を販売開始したことを発表しました。同剤は、IDH1またはIDH2遺伝子変異陽性の神経膠腫に対して国内で新たに承認された分子標的薬として、2026年3月18日に薬価収載されたものです。変異型イソクエン酸脱水素酵素(IDH1)およびIDH2を阻害することで、腫瘍細胞におけるがん代謝物の産生を抑制し、腫瘍細胞の増殖を抑えると考えられています。同薬の承認は、国際共同第Ⅲ相試験「INDIGO」の結果に基づいています。同試験は、特定の適格条件を満たしたIDH遺伝子変異陽性の神経膠腫(星細胞腫および乏突起膠腫)の患者さんを対象に行われました。その結果、無増悪生存期間(治療開始から病気が進行せず生存維持できた期間)の中央値はプラセボ群の11.1カ月と比較してボラニゴ群で27.7カ月と、統計学的に有意な延長が認められました。
神経膠腫とは? どのような症状が出るのか?
編集部
適応疾患である神経膠腫について教えてください。
勝木先生
神経膠腫は悪性脳腫瘍の一つで「グリオーマ」とも呼ばれます。ひとくちに神経膠腫といっても、遺伝子異常や悪性度によって治療方針や予後は大きく異なります。今回話題となっているのは、IDH1またはIDH2遺伝子変異陽性というタイプの神経膠腫です。IDH1/2遺伝子変異は、特に低悪性度~中等度悪性度のびまん性神経膠腫で重要になる分子異常であり、治療戦略を考えるうえで大切な指標となります。神経膠腫が大きくなると、腫瘍の周囲に血流の変化や炎症が起こって脳浮腫(脳のむくみ)が生じます。これにより脳機能が影響を受け、さまざまな症状が表れます。症状は頭蓋骨内部の圧力が高まることで起こる「頭蓋内圧亢進症状」と、腫瘍ができた場所の脳機能が障害されて起こる「局所症状」の二つに大きく分けられます。
具体的な症状は腫瘍の部位や大きさによって異なり、通常は頭痛、てんかん発作、手足の動かしにくさやしびれ、言葉のもつれ、性格変化、物忘れなどがみられます。こうした症状が持続や進行する場合には、画像評価を含めた詳細な検査が必要です。
また、脳血管障害や脳炎など、ほかの緊急性の高い疾患でも同様の症状が表れることがあります。感じたことのない違和感や症状に気付いたときには、放置せずすみやかに脳神経外科や脳神経内科を受診しましょう。

