ピロリ菌は、胃がんの大きな原因の一つとして知られています。除菌治療を受けることで胃がんリスクは下がるものの、「除菌したからもう安心」と言い切れるわけではありません。除菌の意味を正しく理解し、除菌後に何が大切なのかを知ることにより、将来の安心につながります。そこで、阿部クリニック院長の阿部先生に、ピロリ菌と胃がんの関係や、除菌後に気を付けた方がよいことについて解説してもらいました。
※2026年2月取材。

監修医師:
阿部 泰伸(阿部クリニック)
1996年、弘前大学卒業。横浜市立大学附属病院にて研修医として勤務後、横浜市立大学第三内科(現・消化器内科)に入局。横須賀北部共済病院(現・横須賀共済病院)、横浜労災病院、横浜市立大学附属病院消化器内科での勤務を経て、横浜市立大学医学部消化器内科学講座にて助手、助教を務める。2012年より阿部クリニック院長に就任。医学博士。日本内科学会 総合内科専門医、日本消化器病学会 消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医。
ピロリ菌と胃がんの関係
編集部
ピロリ菌とは、どのような菌なのでしょうか?
阿部先生
ピロリ菌は、胃の粘膜に感染する細菌で、長期間にわたって慢性的な炎症を引き起こします。日本では、幼少期の衛生環境の影響から、中高年層に感染者が多い傾向にあります。感染そのものが直ちに問題になるわけではありませんが、長期間感染が持続すると胃がんの発症リスクと関連することが報告されており、注意が必要です。
編集部
ピロリ菌感染は、なぜ胃がんと関係しているのですか?
阿部先生
慢性的な炎症が続くと、胃粘膜の細胞が傷ついて修復を繰り返す状態になるからです。胃粘膜の修復を繰り返す過程で細胞の性質が変化し、胃がんが発生しやすい環境が作られていくと考えられています。
編集部
ピロリ菌に感染すると、胃がんのリスクが上がるのでしょうか?
阿部先生
ピロリ菌に感染しているからといって、必ず胃がんになるわけではありません。ただし、感染していない人と比べると発症リスクが高くなることは分かっています。過度に怖がる必要はありませんが、感染が確認された場合は、適切な検査や治療を検討することが重要です。
編集部
ピロリ菌感染の有無はどのように調べるのですか?
阿部先生
内視鏡検査をはじめ、血液や尿を用いた抗体検査、尿素呼気テスト(UBT/吐き出した息の成分を調べて、胃の中にピロリ菌がいるかどうかを判定する検査)、便中抗原測定など、複数の方法があります。年齢や症状、胃の状態に応じて検査方法を選択し、正確な診断につなげていきます。
除菌すれば安心ではない理由
編集部
ピロリ菌に感染していた場合、どのように治療するのですか?
阿部先生
ピロリ菌に感染している場合は、除菌治療を行います。2種類の抗菌薬(抗生物質)と1種類の制酸剤の計3種類の薬剤を7日間服用することで、約80%の人が除菌に成功するといわれています。治療は外来で実施することができ、入院の必要はありません。
編集部
ピロリ菌を除菌すると、胃がんのリスクは減るのでしょうか?
阿部先生
除菌によって胃がんのリスクは低下することが分かっていますが、完全にゼロになるわけではありません。除菌したからといって安心せず、定期的な検査を継続することが大切です。
編集部
除菌後もリスクが残るのは、なぜでしょうか?
阿部先生
ピロリ菌による炎症で生じた胃粘膜の変化は、除菌後すぐに元に戻るわけではないからです。これまで受けてきたダメージが胃に残り、将来的な胃がんリスクとして影響を及ぼします。
編集部
ピロリ菌の感染以外にも、胃がんの原因はあるのでしょうか?
阿部先生
あります。ピロリ菌は胃がんの重要なリスク因子の一つですが、それだけが原因ではありません。除菌はあくまでも、数あるリスクの一つを減らす方法です。除菌後も胃の状態を確認し続けることで、変化を早期に捉え、適切な対応ができます。

